１５８：お似合い 〜S〜 ページ33
まだ少し寝ぼけ気味のA。
「A？起きた？」
少し身体を離して顔を覗き込む。
「ん。」
「身体は平気？水飲む？」
「うん。」
「持って来るから、ちょっと待って。」
ベッドから出てキッチンに向かい、冷蔵庫から水を出して寝室に戻る。
「はい。」
起き上がってるAに手渡すと、力無く笑って『ありがと』って言った。
ペットボトルの４分の１を飲み、
「翔くんは？」
って俺に差し出す。
「ううん。大丈夫。」
そう言って、ペットボトルを受け取りベットサイドの小さな丸いテーブルに置く。
二人で並んでベットの淵に座ったのはいいけど話す事はなくて。
何をどう言ったらいいかわからない。
チラッとAを見ると、俯いて床をジッと見つめてる。
「あ…のさ？」
「…うん？」
…。
「ごめん！！今回は…今回も俺が悪かった！」
Aに向かって頭を下げる。
頭を下げたまま、Aが何かを言うのを待つしかなくて…。
「ねぇ、翔くん？」
名前を呼ばれて、パッと顔を上げるとAは真っ直ぐ正面を見ていて。
「綺麗な人だったね…？」
それだけ言ってまた俯いた。
「え？」
俺の謝罪に対する答えがそれかと戸惑う。
てか、何の事言ってんだ？
「私の近くにいた人も『お似合い』だって、『それなのに何で別れたんだろ？』って言ってたよ？」
麗子の事か？
「少しね？惨めだったけど、私もそう思った…。」
「え？」
「『お似合い』だって。」
そう言って俺に向けたAの顔は、明らかに泣きそうなのを我慢していて。
思わず力いっぱい抱きしめる。
「何…バカな事言ってんだよ。」
「…っだ…って。」
「ねぇ？俺の気持ち、まだ伝わってねぇの？」
「…。」
「俺、マジですっげぇ好きなんだよ？」
「…。」
「好きで好きで好きで…大好きで。」
「ん。」
「Aが可愛いくて、可愛いくて…。縁起でもねぇけど、あのままAがどうにかなってたら、俺、確実に後追ってた。」
「…。」
ヒックヒックAの漏らす嗚咽が抱きしめてる身体から伝わってくる。
「なぁ…？他の女と『お似合い』とか…そんな悲しい事言うなよ。」
「…ご…さい。」
嗚咽混じりに途切れ途切れに言うから、そこまで追い込んだ自分に嫌気が差す。
「いや…俺も悪かった。でも、もう二度と言うなよ？」
「…ん。」
そう短く返事をしたAを、潰れるんじゃないかってくらいキツく抱きしめた。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年6月21日 14時
