１５７：想像 〜S〜 ページ32
寝ているAを抱き上げて車から降ろす。
ラッキーな事に丁度、住人の人がいてオートロックが解除されていてエレベーターに乗り込む。
子供ならともかく、大人を抱いている俺を訝しげに見ていたけど、『何階ですか？』と聞いてくれてボタンを押してくれた。
鍵も何とか開けて、そのまま寝室に向かいベッドにそっと下ろしエアコンをつける。
無邪気な顔でスヤスヤ眠るAの額にキスをして、寝室を出て下だけ家着に着替えると、冷蔵庫に入ってる冷却シートを持ち、再び寝室へ。
ベッドの淵に座り、シートをペタンとAの額に貼る。
冷たさからか、一瞬眉間にシワを寄せたけど、Aが起きる事はなくて俺も隣に寝転がった。
抱きしめたAの身体の熱は正常に戻っている様でやっと本当に一安心できた。
自分の胸に押し付ける様にして抱きしめる。
「ごめん…。」
寝ているAに謝っても意味は無いってわかってるのに勝手に口から溢れる。
熱中症は死にも至る…
裕太があの段階で気づいてなかったらって思うとゾッとする。
もし…
もし…
Aがそんな事になったら俺は確実に生きていけない。
…確実に後追うな。
それに…
俺を信頼してAを託してくれた、ご両親、雅紀くんに顔向けできない。
「A？ごめんな。」
あの炎天下の中、ひとりぼっちで…
一体どんな気持ちでいたんだろうって。
想像するのは至極簡単で。
けど、所詮想像は想像に過ぎなくて。
実際にその立場になってこそわかる事。
どれだけ辛かった？
どれだけ寂しかった？
どれだけ心細かった？
あぁ、俺ってどうしてこうなんだろって自己嫌悪。
絶対に泣かせたくないし、俺は俺なりにすっごく大事にしているつもり…
なのに、また傷つけて。
「A、ごめん…本当にごめん。」
自分の情けなさに泣きそうになりながら、寝ているAに謝罪を繰り返す。
Aが起きるまで、ひとときも離れたくなくて。
Aが生きているって、俺の腕の中にいるって実感してたくて、抱きしめる腕に力を込める。
『ごめん』を繰り返し呟きながら、Aを抱きしめている腕を緩める事はなくて。
どれくらい時間が経ったのか、
「…ん〜…。」
Aが起きた。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年6月21日 14時
