１５６：お姫様抱っこ 〜S〜 ページ31
裕「はいはい。皆様お騒がせしました。」
裕太が皆にそう言って、
「大丈夫なのかよ？病院は？」
とか心配してくれる声が聞こえる。
「A？帰ろうか？」
Aの頬を撫でながら言うと、
「え？でも…。」
目を伏せて気まずそうに言うA。
「ここだと休まらないからうちで休もう。」
篤「のがいい。」
隆「だな。」
「ね？」
頷くAの頭を撫でる。
「ごめん。迷惑かけたな。」
Aから顔を上げて視線の先の裕太達に謝る。
裕「俺らに謝るよりお前には謝るべき人がいんじゃねぇのか？」
「あぁ。わかってる。」
篤「んじゃ、運びます？どうするか？あんまり揺らしたくないしな。」
裕「担架なんてねぇぞ。」
「いいよ。俺ひとりで平気。」
それだけ言ってAを抱き上げる。
「A。危ないから、いつもみたいにちゃんと掴まって。」
そう言うと、俺の首にギュッと抱きついて首筋に顔を埋める。
裕「『いつも』って…。」
篤「年中、お姫様抱っこしてんのかよ。」
「あぁ、毎日これでベッドに運んでる。」
『…。』
周りの奴らが絶句してる。
裕「なぁ…？」
「何だよ？ただの成り行きだよ。ソファでテレビ見る時に大概膝に乗せてるからその流れだ。」
篤「ここまでとは…。」
裕「てか、毎日って…同棲してんの？」
篤「お前ら知らなかったんか？」
隆「え？！マジで？翔が？！」
「あぁ。んじゃ、俺帰るから。」
驚く奴らにそう言ってAを抱き上げたまま車に向う。
歩いて５分程の駐車場に停めてある車までお互い一言も話す事はなく。
車のロックを片手で解除してドアを開けるとムワンとした熱気。
とりあえずAを下ろして急いで運転席に周りエンジンをかける。
「ちょっと我慢して？」
「ん。」
シートを倒してやり車を発進させる。
暫く走り車も涼しくなった所で、
「翔くん？」
って小さな声で呼ばれる。
「ん？暑い？水欲しい？」
「ううん。」
「ん？」
じゃぁ何だ？って思い、チラッと視線を助手席側に向けると右手を俺の方に向かって差し出すA。
俺も無言でその手を握る。
いつもより、少し熱いAの手。
「こうしてるから、少し寝な？」
「…うん。」
安心したのか、直ぐに聞こえてきた寝息。
寝た事によって力がゆるんだAの手をギュッとしっかり握る。
俺は家に着くまで、一度もその手を離す事はなかった。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年6月21日 14時
