１５４：ヘタレな 〜S〜 ページ29
別にほったらかしてるつもりなんて到底なくて。
久しぶりに会った同級生に、ちょっとした話しが盛り上がって時間を忘れた。
裕太に呼ばれて振り返った先には赤い顔で虚ろな目のA。
え？え？何？どういう事？
焦って気が動転している俺に裕太が怒鳴る。
それでハッと冷静になって、ペットボトルの水を口に含みAに口づけて流し込む。
上手く飲めないのか、半分以上口の端からこぼれ落ちている。
「A？ね？水飲んで？」
意識が朦朧としているAからは返事は無くて。
裕「とにかく、少しずつでもいいから飲ませろ。」
「あぁ。」
篤「翔！ポカリのがいいだろ。」
「サンキュ。」
ポカリのペットボトルを受け取って、何度もAの口の中に流し込む。
額にも氷が乗せられる。
裕「おい！氷もう無い？」
慎「待っといて。今袋に入れてる。」
裕「おう！」
慎司に向かってそう返事した裕太は、
裕「ったく…どんな思いでここに座って待ってたんだろうな…反省しろ！」
「あぁ。」
篤「誰も知らないトコでほったらかしにされて…可哀想に。」
そう言ってAの頭を撫でるから手を振り払う。
「触んな。」
裕「今のお前にそんな事言う権利なんかねぇんだよ。」
篤「意識戻ったらフラれたりして。」
裕「のがいいんじゃね？お前みたいなヘタレには勿体無いよ。」
何も言い返せない…。
俺はひたすら水を飲ませ、裕太は氷嚢を首と額に当てて篤斗はうちわで仰ぐ。
「ねぇ？大丈夫なの？病院行った方がよくない？」
裕太の背後から心配そうにAを覗き込む麗子。
裕「もう大丈夫だろ。体温も少しずつ下がってきてるっぽいし。」
麗「ふふふ。何？その翔の泣きそうな目。」
篤「溺愛する彼女が自分の所為でこんなになったなんて思ったら、ヘタレな翔は泣きたくなるわな。」
『ははは』って軽い笑い混じりで話す。
麗「溺愛って…翔が？彼女じゃなくて？」
目を見張り、その顔は『信じらんない』って言っている。
裕「あぁ。かなりの溺愛。俺らも最初会った時ビビッた。」
篤「素で『かわい』って言ったのを聞いた時はかなりの衝撃だったな。」
裕「エビをあーんもあったぞ。」
麗「人って変わるモンね？」
そんな会話もどこか他人事で。
とにかくAが心配でしょうがない。
ジッとAの顔を見つめてると少し眉間が動いた。
「A？A？俺、わかる？」
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年6月21日 14時
