１５３：我慢の限界 ページ28
『ずっとそばについてる』って言ってた翔くんも、久しぶりに会った同級生に嬉しいのか話しに花が咲いてるようだった。
私はその間ジッと耐えるしかなくて。
スマホで時間潰し…
なんて考えたけど、そんな事したら周りの印象は更に悪くなるに違いなくて…。
これ以上惨めな思いしたくない私は、やっぱり椅子に座って涙を堪えながら俯いてるしかない。
「え？そうなの？やだ〜翔ってば。」
そんな声と共に翔くんとその周りの人の笑い声が私の耳に届く。
「ねぇねぇ？そのコって何？本当に彼女？ずっとほっとかれてるけど。」
「え？彼女なの？親戚のコだと思った。」
…聞こえてるから。
でも、翔くんの立場もあるし我慢しなきゃ…
って自分に言い聞かせる。
チラッと時計を見ると２０分は経っている。
翔くんも皆と楽しみたいなら、私なんて最初っから連れて来なければよかったのに…
それならそれで私も見たくないモノを見る事も、聞きたくない事を聞く事もしなくてすんだ。
炎天下の中、それにバーベキューコンロの熱。
熱い…
暑い…。
でも、自分からお水をもらうなんて到底できなくて…
ひたすら耐えに耐えて４０分。
そろそろ限界かも…
視界が揺れる、頭がボーッとする。
裕「Aさん？え…？ちょ！マジ？！大丈夫？」
たまたま近くを通ったのか、裕太さんに声をかけられる。
「…はい。」
今できる精一杯の笑顔と返事をする。
裕「おい！翔！！」
「何だよ？」
面倒くさそうな翔くんの声。
翔くんは私に背を向けてて顔だけ振り返る。
そこで初めて私がいる事を思い出したらしい。
「え？！A？！」
慌てて駆け寄る翔くんの姿が、涙でボヤける。
裕「お前何やってたんだよ？！」
「あ…え…？」
裕「とにかく水飲ませろ。おい！ちょっと水持って来て！早く！！」
「A？A？」
翔くんに抱っこされて日陰に移動させられる。
何回も名前呼ばれるけど…
返事をしたいけど返事はできなくて…。
首筋や額に触れる翔くんの手。
「あっちぃ…。」
裕「熱中症だ、バカが。篤！氷持って来い。」
慎「救急車呼ぶか？」
裕「いや、まだ軽度だからとりあえず応急処置だ。」
首筋に冷んやりとする感覚。
「A？水飲める？」
裕「『飲める？』じゃなくて飲ませんだよ！」
「飲ませるって…。」
裕「お前しかできねぇだろうが！俺が代わりにやってもいいのかよ！しっかりしろよ！！」
裕太さんが怒鳴ってる声が聞こえた。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年6月21日 14時
