１５２：居心地 ページ27
篤「やっと来やがったか。」
慎「裕太がご立腹だぞ。」
「悪りぃ悪りぃ。昨日、旅行から帰って来てさ」
隆「時差ボケ？」
「いや。場所は伊豆。ただな、渋滞がキツくてさ。」
翔くんが話す隣で手を握られたままビシビシ視線を感じて俯く。
こないだのメンバーだけだと思ったのに、男性は２０人くらい。
…女性も同じくらいかな。
感じる視線はほぼ女性のモノだっていう事だけはわかる。
裕「翔！！」
「悪かったって。寝過ごしたんだよ。」
裕「Aさん？こんにちは。」
突然挨拶されてパッと顔をあげて焦りながらも挨拶を返す。
「こんにちは。遅くなってすみません。」
頭を下げて謝ると、
裕「あ、いや…ね？Aさん頭上げて？」
って逆に裕太さんが焦ってる。
頭を上げると困った顔の裕太さん。
慎「はは。Aさんに助けられたな？翔。」
篤「とりあえずAさん、座ってもらいなよ。」
「あぁ。…A？こっちおいで？」
手を引かれて少し離れた椅子に座らせてくれる。
「ありがと。」
「何か飲む？お茶でい？」
「うん。」
「了解。ちょっと待ってて？」
頭をポンポンして離れて行く翔くんを眺める。
はっきり言って居心地は最悪。
きっとこういう感情って男の人にはわからないんだろうな。
お茶が置いてあるであろう場所に行くまでに様々な人に話しかけられている。
私の知らないたくさんの人に囲まれている翔くんを見て途端に翔くんが遠い人になる。
ここにいる４０人近くの人は、多分大学の友達とか、サークルの仲間とか皆顔見知りだろう。
私だけ部外者。
考え方が卑屈過ぎるかな？
可愛くないかな？
でも、居場所はないし惨めなのは確か。
「翔！元気そうね？」
皆、翔くんの名前を呼ぶのになぜかその人の声だけは耳に響いて。
顔を上げると、大人っぽい綺麗な人。
カットソーにデニムっていうシンプルなスタイルなのに、スタイリッシュに見えるのはそのスタイルがいいからだろうか。
翔くんと並ぶと絵になるよな…。
「本当にお似合いよね？翔くんと麗子。何で別れちゃったんだろうね？」
あぁ…やっぱり…
女ってどうしてこういう勘は鋭いんだろ。
私にわざと聞こえる様に言う人達に…
私は留守番してるって言ったのに…
半ば無理やり連れて来た翔くんに…
惨めな私に泣きそうなのを堪えるのに必死。
『早く帰りたい』そればっかり考える。
お腹痛いって言って帰ろうか？
なんて子供じみた事まで考えた。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年6月21日 14時
