１４７：夏休み９ ページ22
絶対もう足がつかない。
翔くんの足に足を絡めてしがみつく。
こんな事なら浮き輪持ってくればよかった…
海辺で遊ぶくらいしか考えてなかったし。
まさか、こんな深い所まで海に入るなんて思ってもなかった。
「A、それじゃ身動き取れない。」
しがみついたまま、翔くんの顔を見上げると何が楽しいのか笑ってて。
「翔くん！笑い事じゃないよ！足がつかないのに。」
「まだ大丈夫だよ。ほら、腕を首に回して？抱っこしてあげるから。」
背中に回してある腕を、一気に翔くんの首に巻き付ける。
「はは。そんなに怖いの？」
「うん。」
「まだ足つくから平気だよ。」
そう言いつつも、翔くんの腕は私の背中にしっかり回っていて。
「はは。水の中だからいつもより軽い。」
「ね？もう沖に行かないよね？これ以上は無理。」
「俺が抱っこしてても？」
「うん。」
「もう少しだけ平気でしょ？」
「無理！」
翔くんの首にギュッと抱きつく。
「ん、わかった。俺も満足したから、一回上がる？」
「…ん。」
暫く抱っこまま戻り、小学生くらいの子供が立ってるのを見て、
「翔くん、もう大丈夫。下ろして？」
「はいはい。俺はこのまま抱っこして上がってもいいけどね。」
「もう！」
『はは』って軽く笑いながらゆっくり下ろしてくれる。
ちゃんと地面に足がついてホッとしていると、翔くんが私の目の間に手を差し出す。
その手を取ると、優しく微笑んでくれて頭をポンポンしてくれた。
人でごった返すビーチを、手を繋ぎながらパラソルまで戻る。
「翔くん？お水飲む？」
「うん。」
朝、コンビニに寄って買った水は既に温くなっていて。
「ぬるま湯になってる。」
水を一口含んだ翔くんが苦笑い。
「買ってくる？」
「ん〜…いいや。」
そう言った翔くんは、腕を枕にして寝っころがる。
「Aも隣おいでよ。」
片腕を差し出して、『ココ』って目で言ってる。
さすがにここで腕枕は…。
「翔くん？無理でしょ？」
「そ？残念。俺は全然構わないのに。」
ぽてっとした唇を尖らしてボソボソ言う翔くん。
その唇が可愛いくて、人差し指でツンツンしたらパクッて食べられた。
「しょ、翔くん！」
「ん？」
私の指を咥えながら視線をこちらに向ける。
「『ん？』じゃないでしょ？離して！」
私がそう言っても咥えたまま笑うだけで離してくれない。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年6月21日 14時
