１４６：夏休み８ 〜S〜 ページ21
えー、えー、そうですよ。
俺はなで肩ですよ。
矢印ですよ、残念ですよ。
「そんないじけないでよ。」
「…。」
「んもぉ、翔くん？」
「…ん。」
低い声で返す。
「翔くんはすっごいカッコいいからそれだけでいいじゃない。」
「…ん。」
「ね？海入ろ？」
立ち上がり短パンを脱いだAが俺の手を引っ張る。
「はいはい。」
立ち上がりAの手を握る。
ナンパなんてされたらたまったもんじゃない。
海辺で恐る恐る足を海水につけるA。
「つめたぁ〜ぃ。」
嬉しそうなはしゃいだ声を上げながら俺に抱きつく。
ふふ、可愛いなぁ。
『冷たい』と言いながらも足で水をパシャパシャさせていて、まるで子供の様に無邪気にはしゃぐ。
「A？楽し？」
「うん！すっごく。」
満面の笑みを俺に向けてくれる。
そんなに嬉しそうにしてくれると、連れて来てよかったなって心底思う。
Aが喜んでるのを見ると、俺まで嬉しくて幸せな気分になる。
「A、もう少し行ってみよっか？」
海の沖の方を指差す。
「…いい。ここでいい。」
ん？
なんか様子が…。
あ！もしかして？
「Aって、もしかして、泳げない？」
俺のその問いかけには聞こえないフリでソッポ向く。
「ククク。」
思わず笑えてくる。
泳げないのに海来たいって…
腹いてぇ〜。
「もう！そんなに笑わなくてもいいでしょ？」
「ごめんごめん。ね？足届かなくなったら俺が抱っこしてあげるから行ってみよ？」
「イヤ！」
あ〜あ、拗ねた。
「A？ほら。」
握ったままの手をキツく握り直し海の中に引っ張る。
「翔くん！」
「大丈夫だよ。俺がいるでしょ？」
Aの手を引き海の中を進む。
「翔くん？もう無理。怖い。」
腰が浸かるくらいでそう言って俺の腕に抱きつく。
「そ？じゃぁ抱っこしてあげよっか？」
「恥ずかしいからイヤ。」
まぁ、周りには家族連れも多いし…
けど、俺はそれがしたくて沖に来た訳で。
て、事でまだ進む。
Aが『抱っこ〜』っておねだりするまで。
Aの胸の半分位まで来たら…、
「翔くん〜怖い。抱っこ〜。」
って。
思わずニンマリしてしまう。
「おいで？」
腕に抱きついていたAが俺の正面に周り背中に両手を回す。
「A？手がそこじゃぁ抱っこできない。」
そう言いながら足を進める。
「や、待って。足つかない。怖い。」
いやいや、まだつくよ。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年6月21日 14時
