１４５：夏休み７ 〜S〜 ページ20
「すっごい人だね〜。」
白い砂のビーチには黒山の人だかり。
なんとか二人分の場所を確保してレンタルしたパラソルを開く。
パラソルの下で旅館から水着を着てきたAは念入りに日焼け止めを塗っている。
…昨日の食事の後、そのつもり満々な俺。
浴衣姿が妙に色っぽくて更にその欲求が増す。
食事の片付けに来た仲居さんに、『そうだ！』と思いつき、
「白浜ってどのくらいかかります？」
って聞いた。
大体の時間を聞いとかないと海に入らないで帰るって事になりそうだし。
「白浜ですか？今の時期だとそうですね…８時までにはあちらに着いてないと車が停められないので、６時にはここを出た方がいいですね。」
「６時？！」
ナメてた…伊豆を完璧ナメてた。
「朝食どうされます？」
仲居さんに聞かれて考える。
「A？海入りたい？」
「うん！」
満面の笑みで頷くA。
「キャンセルで。」
「はい。かしこまりました。」
仲居さんが下がって、Aを抱き上げて膝の上に乗せる。
「ね？」
Aの顔を覗き込み、それだけ言う。
「…ん。けど…。」
「けど？」
「一度だけね？」
「え？！何で？！」
「明日起きられなかったら困るでしょ？」
「そうだけどさ。」
いじける俺の頬にキスをしてふんわり笑い、
「私ね？翔くんが選んでくれた水着着たいな？」
って…。
他の男には見せたくないけど、確かにあの水着はAによく似合ってて、可愛いかった。
「…うん。」
「ふふ。明日はちゃんとお付き合いします。」
「うん！」
もぉ〜さ？結局こうなんだ。
俺はAの言いなり。
Aには一生勝てない…勝とうとも思ってないけどさ。
Aを抱いたまま、立ち上がりベッドに向かった。
・・・で、無事に駐車場にも車を停められてビーチにいる。
「ね？翔くん？背中塗って？」
日焼け止めクリームを差し出すA。
「はいはい。」
パーカーを脱いだAの真っ白い綺麗な背中にクリームを塗る。
なんか変な気分になってきた。
ヤバイヤバイ…。
「はい、終わり。」
「ありがと。翔くんは？」
「俺はいいよ。」
「赤くなったら痛いよ？塗ってあげる。」
ニコッと笑って言うAには逆らえなくて、シャツを脱いで背中を向ける。
クリームをつけたAの手が背中を滑る。
あぁ、やっぱり…。
「ふふ。」
邪な事を妄想してたらAが不意に笑う。
「ん？」
「やっぱりなで肩。」
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年6月21日 14時
