１４１：夏休み３ 〜S〜 ページ16
「やっぱ混んでんなぁ…。」
さっきから全然進まない車。
「夏休みだしね？」
「失敗したな。もっと早く出ればよかった。普通だと２時間半〜３時間で着くのに。」
「疲れちゃった？」
「ううん。まだ平気だよ？」
「頑張って？」
そう言ったAが俺の頬にキスをくれる。
「んもぉ〜可愛いなぁ。」
「そ？」
「うん。俺の中ではダントツ一番。」
「ふふ。嬉しいな。」
繋いだ手にキュッと力が込められる。
どんなに渋滞してようと、どんなに人混みだろうとAと一緒なら苦にならない。
「ね？どこの海？東京から下ってるのはわかるけど。」
「うん？西伊豆。」
「伊豆？」
「そ。ちょっと年配向け？」
「ううん。翔くんと一緒ならどこでもいいけど。私、伊豆って初めて。」
「今日が西伊豆で、明日は東伊豆。」
「ふふ。楽しみ。」
「俺も。」
東京から伊豆までかかる時間の倍近くかかってやっと今日の宿に到着。
ったく、伊豆って道が少ないんだよな。
抜け道がない…。
チェックインをして、仲居さんに部屋に案内される。
純和風な部屋に大きな窓と部屋専用の露天風呂。
「翔くん…？もしかして？」
「うん。多分Aの思ってる通りかな？」
「一緒にお風呂入って夕日見ようね？」
「…。」
こういう状況ならAは逃げられないでしょ？
それを狙ってちょっと奮発したの。
そうでもなきゃ、俺の願望叶えてもらえなさそうだしさ。
「翔くん？せっかくだから海で見ようよ。」
「A？ここね？海の淵に建ってる旅館なの。お風呂の真下は海だよ？」
「…。」
困った顔のA。
「ね？もう観念しなよ。夕食も遅めの７時半に頼んであるしさ？」
「水着着てい？」
「ありえないでしょ？」
「うぅ〜…バスタオルならい？」
いいけどさ。
どうせ外す事になるだろうし。
「…それなら一緒に入る？」
俯いてるAの顔を覗き込む。
「…。」
「ね？一緒に綺麗な夕日見よ？俺、Aと一緒に見たい。」
もちろん、夕日見るだけ…
なんて言わないけどさ。
「…ん。」
「やった！ありがと。」
Aの頬にキスをする。
「もぉ〜…なんだか翔くんの策略に上手く乗せられた。」
「そ？」
「…うん。」
「はは。とりあえずさ、ちょっと休憩しよ？おいで？」
手を差し出す俺の手を握ったAを抱き寄せて、そのまま抱き上げる。
「翔くん？！」
「ちょっとベッドで休憩ね？」
そのままベッドに向かった。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年6月21日 14時
