１４０：夏休み２ 〜S〜 ページ15
Aの機嫌がどうにか直らなかと買ったアイス。
こんな子供騙しみたいな事通じるかな？
なんて思いながらダブルで注文。
別にさ？
そんなに虐めてるつもりはなかったけど、Aの反応がいちいち可愛いくて、ちょっとやり過ぎちゃった。
まぁ、あれだ…子供が好きな女の子程虐めたくなるっていうアレだ。
て事は、３０になっても俺もまだまだガキって事で…。
「ねぇ、翔くん？」
車をSAから出して目的地まで走らせる。
「ん〜？」
「私がこのアイス好きなの知ってたの？」
「え？いや全然。好きなの？」
「うん。ここのアイスでは一番好き。食べる？」
返事をしないで口だけ開けると、Aがスプーンを口に入れてくれる。
「美味し？」
「ん…ん？チョコの中に何か入ってるの？」
「うん。ラズベリーソース。チョコもハート型で可愛いの。」
「そっか。俺はそのアイスの名前に惹かれて買ったんだけど意外と美味しい。」
「そ？よかった。もっと食べる？」
「いいよ。A食べな？」
「うん。」
「早く食べて手繋ご？」
左手をハンドルから離してヒラヒラさせる。
「うん。」
『ふふ美味し。幸せ。』って呟くA。
「んでさ？」
「うん？」
「今からね、海行く。」
「海？」
「そ。綺麗な夕日が見える海。今日は快晴だからきっと綺麗な夕日が見れるよ。」
「うん。楽しみ。」
そう言ったAが俺の左手をトントンと叩く。
正面を向いたまま手を差し出すと、キュッと握られる手。
「A？こうじゃないじゃん。」
「ふふ。そ？」
指を絡めた握り方に変えようと思っても、Aがキツく手を握っててできない。
「なに？仕返しって事？」
「ふふふ。」
悪戯っコみたいに笑うA。
「A？俺は別にいいけどさ？夜に倍返しが待ってるから。」
「えっ？！」
「ホントはサプライズにしたかったけど特別に今教えようか？」
「え、遠慮しとく…。」
途端に弱気になるA。
「遠慮すんなって。」
「…。」
無言で手の力を緩め、俺の指に自分の指を絡める。
「もうダメ〜。遅〜い。」
「えぇ〜。」
「それにね？俺は最初っからそのつもりで、そこ予約したんだし？楽しみだね？」
「うぅ。」
「大丈夫。そんなにビビる程の事じゃないし？」
「ホントかなぁ。」
不安気なAの声。
「大丈夫だって。俺の願望叶えてもらうだけだよ。」
「それが怖い。」
手を握り締めてAがボソッと言った。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年6月21日 14時
