１２６：おまじない 〜S〜 ページ1
Aを膝に乗せてキスを繰り返す。
ここがAの実家だって事も忘れてAに夢中で口付ける。
マジで…
マジでよかった…。
Aが自分の腕の中にいる事を確かめる様に、腰と背中に回した腕に力を込める。
俺の身体に密着するAの柔らかい身体…
鼓膜に響くキスの音…。
このままだと…。
『コンコン』ってノックする音が聞こえて、慌ててAが膝から降りる。
「何？」
「ご飯の支度できたから降りてらっしゃい。」
「うん。」
Aのお母さんが廊下を歩く音は結構響いてるのに、気付かないくらいキスに夢中だった俺達に顔を見合わせて笑い合った。
「翔くん、行こう？」
「あぁ。」
さて、俺はこっからが本当の本番。
深呼吸をして気合を入れ直す。
「A。」
ドアに向かって歩くAを呼び止めると『ん？』って振り返る。
そんなAに近付いて軽くキスをして抱きしめる。
「どうしたの？」
「ん？俺が頑張れるおまじない。」
Aの顔が『意味わからない』って言ってる。
「行こっか。」
頭をポンポンとして下に降りる。
女の子が彼氏の親に会うのも緊張するだろうが、いい歳した男が彼女の父親に会う緊張って言ったら…。
しかも雅紀くんの『旦那候補』って言う一言付き。
いや…さ……？
俺にはそのつもりはあるよ？
あるけど…
まさかこんな展開で会うとは思わなかった。
でも、いい機会だ、ちゃんとケジメつけよう。
「翔くん、こっち。」
Aの後をついて行き、ドアを開けた先にはリビング。
ソファに座り新聞を広げるAのお父さん。
テーブルには本当に寿司が並んでて、尚更緊張してきた。
「どうぞ、座って？」
お母さんに促される。
「は、はい。失礼します。」
「翔くん、ここどうぞ？」
そうAが自分の隣を指差す。
「あぁ、ありがとう。」
「ねぇ、なんでこんなに豪華なの？」
「だって雅紀が『Aの旦那候補が迎えに行くから寿司用意しとけ』って電話してきたのよ？」
『旦那候補』って言葉にピクッと反応したお父さんの手を見逃さなかった俺。
「はぁ？何言ってるのよ！バカな雅紀の言う事なんて真に受けないでよ！」
Aが興奮してまくし立てる。
「いいじゃない。ねぇ？櫻井さん？」
俺に振る？
ん…でも…
「あ、あの！ご挨拶が遅れましたが櫻井翔と言います。もう既にお分かりだと思いますが、Aさんとお付き合いさせて頂いております。」
それだけ言って頭を下げた。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年6月21日 14時
