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「トランペットもピアノも、一応先生は居るんやな?」
「はい。ピアノは近所のピアノ教室の先生なんですけど、
トランペットは笹山先生に見てもらっていて、」
「笹山先生ってあのフリーランスのプロ奏者の?」
「はい。そうです」
「すごいな、どういう繋がり?」
「父がたまたま小中一緒の同級生やったみたいで。
トランペット始めたって話したら一回聞きたいって、」
「そこで見初められたってことか」
「そう、なんですかね。
でもまあ、気に入ってもらえたみたいで。
中学校に上がってからはずっと面倒見てくれてるんです」
「すごいな。レッスン、普段どのくらいやってるん?」
「トランペットは週に一回で、
ピアノは私の行ける曜日と先生の都合が合わなくて、
高校に入ってからは二週間に一回しか見てもらえてないんです。
個人練習は、どちらも毎日必ずしてます」
「そっかそっか」
「あの、先生、」
「何?」
真ん丸で、綺麗な瞳。
「もし良かったら、受験対策だけやなくて、
個人練習も付き合ってくれませんか?」
「え?」
「レッスン、して欲しいんです」
後から思えば、自分でも、
何で突然こんな打診をしたのか分からない。
でもとにかく、この人の音楽に触れてみたかった。
この人と、音楽をしてみたかったんだ。
本能が、そう言っていたんだ。
「わかった、付き合うよ」
「え、いいんですか?」
「ははっ、自分で言ったんやろ?」
こうして、私たち二人の日々は、
何の前触れもなく、突然始まったんだ。
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作者名:みなみ | 作成日時:2019年5月3日 11時