allein ページ3
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「君の音は、本当に素敵だ」
私には、トランペットしか無かった。
小学一年生の時から始めて、
気付いたらもう十年近く経っていた。
今まで沢山の人に私の音を、奏でる音楽を褒められた。
色々な賞を貰ってきた。
私の価値は、トランペットだけが証明してくれた。
銀色に輝く、この私の楽器こそが、
私の唯一の自信で、信じられる物だったんだ。
中学でも、高校でも、吹奏楽部には入らなかった。
私が目指すのはオーケストラの奏者だったし、
自由に練習したかったから。
私は、何時も一人だった。
友達も、信頼している人も居なかった。
音楽に関して無知な上に仕事が忙しい親は、
ひたすらトランペットに打ち込む私には無干渉。
人と関わるのは苦手で、仲が良い友達も居ない。
ずっと、一人で生きてきたつもりだった。
それでも、私はきっとずっと、寂しかったんだ。
それを押し隠すみたいに、
練習すればするだけ私のことを裏切らないトランペットに、
私はのめり込んでいった。
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作者名:みなみ | 作成日時:2019年5月3日 11時