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先生は、少し困ったように眉を下げた。

だから私は咄嗟に、言わなければ良かったって思った。






今まで色々なプロの先生の個人レッスンを受けたことがある。

でも、個人レッスンの時というのは大体どの人も、
自分が実際に楽器の演奏をしながらレッスンをするものだ。


その方が音のイメージは掴みやすいし、
その人の技術を自分のものにするのに容易い。





確かに中間先生とは、基礎練習がメインだったし、
楽器を使わない楽典やソルフェージュのレッスンも多かった。

それに、先生は言葉のチョイスが独特な所があって、
しかも語彙がすごく広くって。

先生が一つ言葉をかけてくれるだけで、
実際に先生の音を聞かなくても、
私の演奏は大きく変わったりした。



だから、最初はあまり気にもしていなかった。







「…ごめん、そうやんな。
俺が実際に吹いた方分かりやすいもんな」

「…いや、それもあるんですけど…そうやなくて」

「え?」

「純粋に私の個人的興味です。
聞いてみたいんです。先生の音を」






先生は、ただでさえ大きな丸い瞳を、少し開いて私を見つめる。





だから、私も。


いつも先生がそうするように、見つめ返した。

逸らさずに。









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作者名:みなみ | 作成日時:2019年5月3日 11時

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