piangendo ページ13
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中間先生の学校でのレッスンと、笹山先生のレッスン、
そしてピアノ教室の往復の日々。
音楽に集中したいからこそ、
学校の勉強もおろそかにしたくない。
確かに慌ただしい生活を送ってはいるものの、
中間先生のレッスンが始まってからというもの、
確実に成長を実感できる経験が重なっていて。
私は充実した日々を過ごしていた。
鞄と楽器ケースを持ったまま、
重たい音楽室のドアを開けるのには、もう慣れた。
「お疲れ様」
「よろしくお願いします」
ドアを開けた先で、
いつもオーケストラスコアを読んでいる先生。
私が入ると、必ずこちらを真っ直ぐ見て笑いかけてくれるのが、
私は何だか嬉しかった。
ずっと音楽だけに向き合い、
仕事で忙しい両親とも家族らしい時間を過ごすことはなく、
学校でも友達と呼べるような人もいなくて。
それでいいと思ってた。
音楽があればいいって。
でも、そんな音楽の世界で、一緒に寄り添って、
まだ見た事がない音の先まで連れて行ってくれる中間先生と過ごす時間が、いつの間にか私の支えになっていたんだ。
一時間ほど練習をして、二人で少し話しながら休憩していた時、
私はずっとずっと思っていたことを、不意に先生にぶつけてみた。
「私、先生のトランペットの音、聞いてみたいです」
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作者名:みなみ | 作成日時:2019年5月3日 11時