【1】右斜め前の変な人/晴海 ページ14
偶然なのか、必然なのか。
いつも、右斜め前には君が居る。
窓から零れる風と同じように、黒色がそっと、視界の片隅で揺れるのだ。
「保科、ちょっと消しゴム貸してくれよ」
「別にいいけど」
「さんきゅ」
たまに思い出したように振り返って、他愛もない話をする。
彼に使いかけの消しゴムを手渡した。
吉田の隣では、私が貸してあげたのに、なんて呟いた女子生徒がひとり。
本当に、その子に貸してもらえばいいじゃない。
「保科」
そんなに名前を呼ばれたら、勘違いするでしょ。
もしかして、必然なのかなって。
この微妙な私達の距離が、偶然じゃないかもしれないなんて。
そんな勘違い、させないでよ。
「保科」
「なに」
何を考えているのかわからないような瞳をして、悩ましいのは私だけ。
「何考えてんの?」
それは私の台詞でしょう?
「次の数学、嫌だな、とか」
「ふぅん」
「吉田、次あんたじゃない?問題」
「そうかもな」
「余裕だね」
「当たり前だろ」
ふざけたように紡ぐその言葉も、頭の中でいつでも思い出せるようになって。
揺れる黒髪が、きゅっと私の胸を掴むのだ。
「保科」
「なあに」
「そろそろさ、俺の事考えてくれただろ?」
首を傾げるその姿が、
なんでこんなに愛しいの?
「ばか」
「馬鹿はお前だ」
「なんでよ」
「気付くのに、三年」
「?」
この三年で、何回あなたに名前を呼ばれただろう。
「保科」
この三年で、どれだけあなたのことを考えたかな。
「保科」
「、はい?」
「好きだよ」
ばか、ばか、ばか。
「返事は無いのかよ」
「...好き」
【あとがき】右斜め前の変な人/晴海→←【あとがき】あめのひromance/四葉みゆ
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