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55《ym》 ページ10

ym.side





カーテンの隙間から見える景色は制服なのに派手な格好で
締め切られたこの部屋まで笑い声が聞こえる。


……文化祭なんか早く終わればいい。


保健室の一角のベッドでサボってる俺はイベント事が大嫌いだった。

何処の教室もこの日だけは人が詰め寄せるから避難場所はここしかない。



狭い空間に隔離されてるような孤独感。
それも好きじゃないんだ。



「まだ体調悪い?」



向こうから聞こえる声は聞き慣れない若い男性のもの。
いつもの養護教諭が産休に入って臨時で来た先生だ。



「山田くんのクラスはお化け屋敷だっけ?」



話し掛けられたくないのに何の事情も知らないから話し掛けてきて全然休まらない。

無視を決め込めば



「山田くん、開けるよ?」



無遠慮に開かれるカーテン。

片腕を頭の下に回して天井をボーッと見つめながら端の方に捉えたソイツの顔は不気味な笑顔を浮かべていた。



「……なんですか」


「行かないの?」


「……嫌いなんで」


「えー、楽しいじゃん!」


「……」



面倒なタイプ。

放っておいてほしい。
俺は何があったって何を言われたって行く気はない。



「体調不良なんで」


「そっか、残念だね。退屈でしょ?」


「別に」



退屈は事実だが、否定しておかないと何を持ちかけてくるか分からない。

だけど、この先生は思ったよりもバカだった。



「俺はアニマルカフェっつーのやったよ。
これがさけっこう本格的なメークして!
ほとんど化け物カフェなんだわ!笑」


「……」


「客寄せ行くとお化け屋敷と勘違いされるくらい。笑
最初は乗り気じゃなかったんだけど今となってはいい思い出。
あのテンションは高校生だからだよな」




楽しさのプレゼンして俺を追い出そうとしてるな。



「今しかできないことってあるんだよ?
元気なのにベッドの上なんて勿体ないと思うな〜」


「体調不良だって言ってますよね」


「今日はずっとそこ?」


「体調不良なんで」


「ほんとに〜?」




うざい。

コイツ、教師じゃなかったら叩き出すのに。




「山田くんお腹空かない?」


「空きません」


「痩せ我慢はよくないよ。
何か貰ってくるけど一人になっても大丈夫?」


痩せ我慢ではなく本当に食欲はないが、いなくなってくれるならなんでもいいや。

「はい」と返事をすると「待っててね」と言い残し出ていった。



やっと一人になった。

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めい - めちゃくちゃ面白くて一気に読んでしまいました!他の作品も全て読ませて頂きました。更新楽しみにしてます…! (2023年2月18日 7時) (レス) id: ddf213f93e (このIDを非表示/違反報告)
Rio(プロフ) - 主様のお話大好きです…!!続き楽しみにしてます! (2023年2月5日 18時) (レス) @page37 id: 9d6c92ab72 (このIDを非表示/違反報告)
suger(プロフ) - こんなに切なくて甘くて面白いお話読んだことないです!!続き、読みたいです…!! (2021年5月15日 17時) (レス) id: 50dbc87e12 (このIDを非表示/違反報告)
綾李里(プロフ) - ゆめる。さん» ありがとうございます…!大好きのお言葉嬉しいです(^^)頑張ります…! (2020年5月8日 17時) (レス) id: 7762ef5dd7 (このIDを非表示/違反報告)
綾李里(プロフ) - saarymcnさん» 更新遅くてすみません。涙なんて…勿体ないお言葉…! (2020年5月8日 17時) (レス) id: 7762ef5dd7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:綾李里 x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/a_cat_hp/  
作成日時:2018年5月6日 22時

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