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夏休みと言う一ヶ月は過ぎるのが早い。
あっという間に折り返して終わってしまう。
「クシュンツ……はぁ」
「夏風邪?」
「ん……」
「ドジしたなぁ」
「誰のせいだと…クシュンッ!」
お菓子を食べて寛いでいる大貴は何の悪気もないように見える。
いや、無いな。
部屋主の僕が風邪を引いてベッドの上でグッタリしている原因は貴方だというのに。
「肝試しの時、全然怖がらないから平気なのかと思ってたけど本当はビビってた?」
「プールのあとに肝試しなんて聞いてなかったんですけど」
「だって怖いじゃん!知念がいれば安心でしょ?」
「人を盾にして……」
「ごめん!」
「頭痛い……岡本先輩は受験だし、伊野尾くんは家族と旅行に行くって言ってたから僕しかいないのに……」
「明日は雨だってよ?」
「雨、なら大丈夫か……」
「ゆっくり休みな!」
大貴の言葉を鵜呑みにした僕が馬鹿だった。
翌日の天気は大貴の言うように雨だった。
僕は熱を出してベッドで眠っていたんだけど
ガタガタッ
「んっ……?」
目を覚ますと部屋は真っ暗。
物音の正体は風と窓に打ち付ける雨。
突如発生した台風の影響で大荒れだった。
「えっ……、」
昨日はテレビを見る気もスマホを触る気も起きなくて天気予報を見ていなかった。
何の対策もしていない花壇は今頃台風にやられてしまっている。
悪いことって重なるね……
「はぁ……」
__________
そしてまた翌日。
台風が過ぎ去り何事もなかったように顔を覗かせた太陽。
僕の体調も元通りになっていた。
「大貴のせいだからね!」
「悪かったと思ったからちゃんと手伝うよ!」
朝早くに大貴を呼び出し学校へ向かった。
校庭は台風が過ぎ去ったあとをくっきりと残していた。
正直見たくないな……荒れ果てた姿。
重い足取りで向かうと先を歩いていた大貴が声をあげた。
「知念、見て!」
その声が明るいもので、何を見つけたのかと指差す方を見ると黄色い花が揺れていた。
重しが落ちたように駆け出した僕はしっかりと台風対策のされた花壇に安堵の溜め息が溢れた。
「、良かった……」
「心配することなかったじゃん。
先輩でも来たんじゃない?」
回りもちゃんと固定されていてここまで出来るのは先輩しかいない。
ありがとうございます。岡本先輩!
夏休み最後の大事件はこうして幕を閉じた。
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めい - めちゃくちゃ面白くて一気に読んでしまいました!他の作品も全て読ませて頂きました。更新楽しみにしてます…! (2023年2月18日 7時) (レス) id: ddf213f93e (このIDを非表示/違反報告)
Rio(プロフ) - 主様のお話大好きです…!!続き楽しみにしてます! (2023年2月5日 18時) (レス) @page37 id: 9d6c92ab72 (このIDを非表示/違反報告)
suger(プロフ) - こんなに切なくて甘くて面白いお話読んだことないです!!続き、読みたいです…!! (2021年5月15日 17時) (レス) id: 50dbc87e12 (このIDを非表示/違反報告)
綾李里(プロフ) - ゆめる。さん» ありがとうございます…!大好きのお言葉嬉しいです(^^)頑張ります…! (2020年5月8日 17時) (レス) id: 7762ef5dd7 (このIDを非表示/違反報告)
綾李里(プロフ) - saarymcnさん» 更新遅くてすみません。涙なんて…勿体ないお言葉…! (2020年5月8日 17時) (レス) id: 7762ef5dd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綾李里 x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/a_cat_hp/
作成日時:2018年5月6日 22時