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コンコンッ。控えめに響く音。

「失礼します」スライドされた扉から中を窺ってから先生へ声をかける小さな彼。




「……知念くん?」


「……先輩と、話したいんです」




知念くんから来てくれるなんて思わなかったから何らかの展開はあったものだと思われ、先生に山ちゃんのことをお願いして近くの空き教室へ入った。




「あの、山田くん……僕のせいですか?」


「違うよ。少しばかり虚弱なんだ。」




気にかける言葉から全くもっての脈無しではないと思った。
本当に嫌いならこうして心配することもしない。
これが勘違いならば僕は余計なことしか出来ないね。




「先輩に聞いても仕方ないんですけど、山田くんは僕のことをどう思ってるんでしょうか……

さっき、……」


「告白された?」


「、……はい。そうだと思います…」




知念くんは確か自分は山ちゃんに嫌われていると思っていたんだよね。
急展開に驚いたんだろうな。
話を聞いて僕も強行突破の山ちゃんに少し驚いた。




「そういうことなんだ」


「どうして?

好きになられるような心当たり一つもないです」



それは、そうだろう、ね。

だって、知念くんが山ちゃんのことを知る前からの話しになるんだから。



「僕からは言えない。けどね、これだけは知っておいてほしい。
山ちゃんはそんなに悪い子じゃない」


「そんなのっ……」


「不器用で素直じゃないところもあるけど、ちゃんと人としての温かみはあるんだ。
僕はそんな山ちゃんの姿を小さい頃から見てきて……余計なことだって怒られるけど」



伝えるって難しいな。
文才もないのに、次の言葉を考えて喋ろうとするからどんどん拙くなっていく。
もしかしたら、掻き回しているのは自分なのかな。



「岡本先輩は優しいですね……。

僕、分からない…」


「無理に付き合ってあげてなんて言わないよ。
本気で嫌なら僕からも言っておく」



まだまだ先の見えない列車に乗って、あっちへこっちへとレールを切り換える。

ちょうど二人は今、トンネルの中。

でも最後に辿り着くのはきっと、最初から決められていたたった一つの終着点。

その場所が、二人にとって悪いものでなければいい。



「一度でいいから、向き合ってあげてくれないかな?」



その後、知念くんからの返事はなかった。

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めい - めちゃくちゃ面白くて一気に読んでしまいました!他の作品も全て読ませて頂きました。更新楽しみにしてます…! (2023年2月18日 7時) (レス) id: ddf213f93e (このIDを非表示/違反報告)
Rio(プロフ) - 主様のお話大好きです…!!続き楽しみにしてます! (2023年2月5日 18時) (レス) @page37 id: 9d6c92ab72 (このIDを非表示/違反報告)
suger(プロフ) - こんなに切なくて甘くて面白いお話読んだことないです!!続き、読みたいです…!! (2021年5月15日 17時) (レス) id: 50dbc87e12 (このIDを非表示/違反報告)
綾李里(プロフ) - ゆめる。さん» ありがとうございます…!大好きのお言葉嬉しいです(^^)頑張ります…! (2020年5月8日 17時) (レス) id: 7762ef5dd7 (このIDを非表示/違反報告)
綾李里(プロフ) - saarymcnさん» 更新遅くてすみません。涙なんて…勿体ないお言葉…! (2020年5月8日 17時) (レス) id: 7762ef5dd7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:綾李里 x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/a_cat_hp/  
作成日時:2018年5月6日 22時

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