▶マッドスマイル (ページ28)

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笑顔が27こページ28

『はい！連れてきたよ、奥さんと娘さん！！』

扉を開けて中に入ってきたAの両手には、ズルズルと何かが引きづられていた。
それをスパイの目の前まで引きずり、ゴロンと転がす。一つは若い女性の死体、もう一つは10歳くらいの少女の死体であった。
男はそれを見るなり、叫び声をあげる。

男「そんな……嘘だ……イリア……マリー……う……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！！！」

ショッピはチラリと死体へと視線を向ける。二体とも手や体に切り傷があり、喉には深い傷がある。想像を上回ったAの行動に溜息が出る。幹部入りたての頃であれば、あの部屋の隅で失神しかけている女のようにガタガタと震えるだけであったのだろう。しかし慣れとは恐ろしいもので、驚きはしたもののそこまでの恐怖心はない。あぁいつの間にか自分も先輩達のように此処に染まってきたんだと改めて感じていた。

一方Aは無邪気な笑顔でスパイに話しかける。

『どう？どう？本当は生きたまま連れて来たかったんやけどなー。抵抗するからさ、ちょっと傷つけてみたりもしたんやけど、どうにも埒が明かんくて……。しゃーないから死んでもらってん』

語尾に音符でもついているかのように話すA。男は未だに声にならない叫びをあげ続けており、Aの話を聞いているのかは分からない。

男「あぁぁぁぁぁぁあああああああ……い……いり、や……うそだぁぁぁぁぁぁぁあああ！……まりー……うわぁぁぁぁぁぁっ！！」

『そんなに嬉しかった？やっぱり家族っていいよなぁ』

Aはうんうんと頷く。それをショッピは疲れた目で見る。

『さぁ、スパイさん。家族に会うことができたんやから笑って？』

スパイの前にしゃがみこみ、コテンと首を傾げながらAは話しかける。そんなAを男は虚ろな目で見る。

男「わ、わら、う……」

『そう、スマイル！』

にぃと指で口角を上げるAに対し、男は少し我に返る。

男「か、家族が死んだんだぞ！笑えるか！イリヤを……マリーを返せっ！！」

今にも掴まり出しそうな勢いで男はAに向かって叫ぶ。

『なんで？家族に会えたんやで？願いは叶ったやろ、笑ってや』

キョトンとしてAは返す。その様子に男は一瞬怯むもAに向かって罵詈雑言を吐く。
すると、Aはゆっくりと立ち上がり、男の頭頂部を掴み、顔を上に向けるように男の髪の毛を引っ張る。

『……笑えよ』