▶マッドスマイル (ページ3)

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笑顔が2こページ3

『あえ？チーノ？……まぁいっか。開けるよー。やっほートントーン』

地獄への扉をあまりにも軽くガチャっと開けるAに、思わずチーノは思考が停止する。
Aに引っ張られながら入室すると、目の前には隈をくっきりと作った鬼の書記長鎮座しており、思わず空いている方の手で股間をギュッと掴んだ。

tn「……なんや」

ドスの効いた声で一言放つトントン。その一言で機嫌が最高潮に悪いことがわかり、少しでも触れたら爆発するのは新人幹部であるチーノにも分かる。
喋ったらマズイ、何なら指一本動かそうものなら自分の首が飛ぶ。そのようにチーノには感じられた。
冷や汗を流すチーノのことは露知らず、場にそぐわない気の抜けた声でAはトントンに声をかける。

『私はトントンに笑顔を届けにきただけやで。でも、その前にチーノの修正する書類ちょーだい！』

満面の笑みで言うAにチーノはバクバクと心臓をうるさく打つしかない。

tn「あぁ……これや」

案外素直に書類を出すトントン。その書類を素早くチーノは受け取りAの後ろへとすぐに身を隠す。

『……トントン。笑顔は？』

手を腰に当て、むすっとしてAは言う。
それを見てチーノは命知らずにも程があるだろ！と内心突っ込む。
トントンはと言うとギロッとAを睨みつけている。

『もう、ほらトントン。笑顔や、スマイル！にぃ～』

Aはそんなことお構いなしにトントンに少し近づき、自分の口角を指でクイっとあげ笑顔を作る。
チーノはあまりの行動に逃げることもできず、ただただその場で固まる。

tn「……は？」

今までで一番低い声が部屋に響く。チーノは余りのことに少し漏らしてしまった。
しかし、Aは怖がる様子もなく、トントンの机の前まで歩みを進め、少し体を前のめりにして堂々と言葉を紡ぐ。

『トントン？え・が・お・は？』

チーノは後ろから見ているためAの顔は見えない。しかしトントンの表情がピシリと固まったことだけは分かった。

(あのトントンが固まるって……何したんや？)