恋は思案の外。3

101 ー健二郎sideー ページ5

「いやだって、
したやん、キス。」





オブラートだか
ビブラートだか知らんけど


キスしたんは事実やし？





誤魔化して言う必要あらへん。








『あれは、、


【事故】です。』






前を見据えたまま
自分を納得させるように言いよるAちゃん







事故扱いされたことに
何や胸んあたりがザワっとしたけど



マスクから覗くAちゃんの視線が
一瞬揺らいだのを見て








【最低】の言葉の真意を思い出す。









「んな大事にとっといたもんでもないやろし？

大したことないやろ。」









Aちゃんにキスしてもうたことは
自分でもほんまに驚きで






内心、動揺しまくってて
あわあわしてまいそうやったんを


悟られたくなかってん。







せやからそんな言葉しか出てけぇへんくて


それも結局は
俺の考えなしなとこがあかんねんな







いま思えばわかるねん。


たしかに最低や、俺。








せやけど、ちゃうねん。






それは取り繕うためであって

キスしたことは……ちゃうねん。









「…………余計な事言うてもうたんは、謝る。
あれは無神経やったと思う。」







俺かてあんなこと、
言いたいわけやなかった。



それだけでも伝わってほしいねんけど





もうひとつ。









「せやけど、





キスしたんは、謝らへん。」





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