恋は思案の外。3

098 ー健二郎sideー ページ2

休みになるとどうしても
時間を忘れてまうぐらいに


趣味に没頭してもうて。






「…………あかんやん、またこんな時間やし。」







プラモデル作りに始まり
ルアーのメンテナンスまで

やり始めると止まらんくて




気づいたときには
空も茜色に染まり始めとった。








昼飯も食わんと
黙々と作業しとったから


時計の針を確認すると
一気に腹が減ってきて、









あれ？
これ前にも同じようなこと、
あらへんかったか？









…………まさか。







ついこの前の記憶が呼び戻され


思わず冷蔵庫へ駆け寄る。









「…………デジャヴ。」







冷蔵庫の扉を開いたまま
項垂れる、俺。


いや、自分があかんねん。
何も買うておかんかった俺が。







たしかあのときは
コンビニ行こう思て

行ったはえぇんやけど


たまたまAちゃんと岩田を見かけて
結局手ぶらで帰って来てしもうたんやな。






「もうデジャヴは、いらん。」





コンビニやと何かわからへんけど
あかん気がするから

目的地は
近所のスーパー。







外に出ると
冷たい空気が頬を掠める。


日が沈んで
辺りも暗くなり始めて……





「……にしても、寒すぎやろ。」






感傷的になられへんほど
めっちゃ寒い。







スーパーに入ったとこの壁に貼っとった
特売のチラシを横目で見つつ


中に入ろうとすると







ドンッ


という音とともに
胸の辺りに感じた衝撃。





あかん、よそ見しとったら
誰かにぶつかってしもた。





『あっ、、すいません……』



「いや、こちらこそすまへん、
全然前見てへんくて……」









ちょい待ってや。


この声……









…………いらんて、デジャヴ！






.

099 ー健二郎sideー→←097

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す