16.先生の事情 ページ16
.
急に泣き出した私を見て
先生が、驚いた顔をする。
耐えられなくなって、私は
来た道を引き返して
ダッシュで逃げた。
紫「黒川！」
あっという間に先生に追いつかれて
腕を掴まれる。
貴「や…………っ」
私の泣き顔に、先生が戸惑っているのがわかる。
だけど、涙が止まらない。
紫「どうしたの？なんで逃げんの？」
貴「や、だ…………。」
嫌という言葉しか、出てこない。
先生のことが、大好きだからこそ
先生に遊ばれるなんて
耐えられへんかった。
紫「A。」
急に名前を呼ばれて
息が止まりそうになる。
先生は、ほんまにズルい。
こうやって、あまりにも自然に
私の心の中に入り込んでくるんだから。
先生は、私の手を引いて
すぐ側の空き教室に誘導した。
紫「A、何があったの？
俺、何かした？」
ふるふると、首を横に振る。
すると、先生は
「じゃあ、誰かに何か言われたの？」と
問いかけてきた。
私が黙ってしまうと、先生は
私の手をそっと握り
私の瞳を覗き込んできた。
紫「A、黙ってたら分からへんやろ？」
優しい優しい、先生の声。
その声を聞いていたら
余計に、涙が溢れてきた。
そんな私を見て、先生が
私の腕を引き寄せて
ぎゅっと抱きしめてくれた。
紫「A、泣かんといてや。
おまえに泣かれたら、俺
どうしていいか分からへん………。」
まるで、小さい子をあやすように
私の背中を、トントンと叩く。
それだけで、なんだか心地良くて
懐かしい気持ちになった。
貴「………先生、彼女おるんでしょ？」
勇気を出して、そう問いかけると
先生は「ああ、なんだそのことか」と
そう言わんばかりの顔をした。
紫「なんや、誰から聞いたん？
そんなこと。」
貴「クラス中で、噂になってる。
校内の女子は、みんな知ってると思います。」
私がそう言うと、先生が
盛大な溜息をついた。
紫「そんなん、嘘に決まってるやん。」
へ………う、そ？
紫「まあ確かに、学生時代は彼女おったけど。
もし今もおるなら
おまえにあんなことするわけないやん。」
貴「え………じゃあ
なんでそんなこと言ったんですか？」
私がそう問いかけると、先生は
困ったように頭を掻いた。
紫「一時期生徒から告白されることが多かって。
やから、彼女おるいう嘘ついて
予防線張ってた。」
何それ。じゃあ、先生
今はフリーなの？
貴「嘘…………。」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2670人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「永瀬廉」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Mt.Wind Bell(プロフ) - 泣いて泣いて泣きまくって目がパンッッッパンです痛いです、大感動しました、 (2018年9月15日 20時) (
レス) id: 4eba5a31cc (このIDを非表示/違反報告)
永瀬もも 。(プロフ) - 完結おめでとうございます！そしてお疲れ様です！ 私は主人公がどちらも選ばずに終わる感じすごく大好きです！他の方の作品などはどちらか選んで完結してるイメージですが私はこういうのがすごく好きです！笑笑 (2017年10月19日 9時) (レス) id: 488be09426 (このIDを非表示/違反報告)
LuLu(プロフ) - 完結おめでとうございます！サラさんの世界観、とても大好きです！これからも陰ながら応援させていただきますね！ (2017年9月9日 6時) (レス) id: 9f222d3faa (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - きなこさん» ありがとうございます(>_<)恋涙はとりあえず完結致しますが、他の作品でもお会い出来たら嬉しいです。 (2017年9月9日 1時) (レス) id: 54583e2642 (このIDを非表示/違反報告)
きなこ(プロフ) - サラさんの作品の虜になってしまいました...///更新楽しみに待ってます!!! (2017年8月19日 10時) (レス) id: 2d2c384731 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：サラ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時：2017年2月23日 15時
