朝顔に包まれて【一期一振】 (ページ37)

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三十七、ページ37

ぴたり、と壁を壊す音が止んだ。
諦めたか、とほっと息をつく。

一際大きい音がして、月明かりがさしこんだ。

「……あ」

壁が壊され、部屋が丸見えだ。
敵は大太刀。私と後藤くんを認識すると、こちらの様子を伺いつつ切っ先をこちらに向ける。
殺される。思わず目をつむると、「大丈夫だ」と肩をぽん、と叩かれた。

「後藤く、」
「俺が相手してやる。大将は俺が守る」
「待って、後藤くんはまだ」
「弱いからって逃げちゃいけない。おい……でかいからって、威張んなよ！」

短刀を抜き、後藤くんは勢いよく構える。
大太刀が僅かに動くと同時に、後藤くんは飛びかかった。
そのすばしっこさを活かして、右へ左へとちょこまか動く。
そして後藤くんは迷わず、胸を狙う。

「遅い！」

大太刀の大きい挙動では後藤くんを捉えきれず、短刀が胸を貫いた。
……訳ではなかった。
突如敵の後頭部から両目にかけてすっぱりと斬れた。

「！？」
「もー、後藤はまだ練度低いんだから、単体で突っ込んでっちゃダメだよ？」
「だな。ま、俺っちたちはだいたい片付けたが……平気か、たいしょ？」