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三十一、 ページ31
「主殿と信頼を深めたいのはいっぱいいっぱいなのですが、主殿はこちらに前顕現していた私のことを想っていらっしゃる」
「……」
「前の私を忘れろとは言いません。ただ、少しずつ、思い出を作ってゆきたいのです。主殿」
そう一期に言われて、思わずきょとんとした。
それから、心の奥底でぱりん、と何かが割れるような感じがした。
足がふらつく。
直ぐ様一期が受け止めてくれた。
「主殿、大丈夫ですか」
「う、うん。平気」
一期を見上げると心配そうな顔をしていたが、私が答えると安堵したようにほっと息をついた。
不思議な感覚に悶々としていると、薬研がひょっこりと顔を出した。
「……失礼。お取り込み中だったか」
「えっ？いや、別に」
「いいんだいいんだ、そんなこともある。いち兄、良かったじゃないか」
「薬研！違うよ、私は決して」
「あー言い訳は聞かねえ。じゃな、たいしょ、いち兄」
颯爽と去っていってしまった。
まずい、何か勘違いされたんじゃないか。これ。
しかしもう間に合わない。諦めるしかないらしい……
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作者名：ひな丸 | 作成日時：2016年6月6日 22時
