39.力の差 ページ42
ナイフを振る。ゾムはそれを無駄の無い動作で躱す。腕を狙っても脚を狙っても顔を狙っても、分かっているかのように、いや実際きっと私の動きで分かってるんだけど、全てあっさりと避けられる。
zm「ほらほらそんなんじゃ逃げられへんで〜!」
ゾムは私のナイフを避けながら手持ちのナイフで遊んでいる。ついでに言えば彼は私を攻撃してこないし、なんならその場から動いていない。事前に説明された私へのハンデだ。
彼の声は笑っているけど目はちっとも笑ってなくて、それが少し怖かった。
そして、
zm「ん、10分たったな、」
ひやりとした。
そのゾムの言葉を認識した時には、
zm「Aの負けや。」
私の目には空を背負う彼が映り、首にはナイフが突きつけられていた。
「は、」
zm「ん?」
「はやい、ね。」
zm「せやな。」
頭の上で地面に縫われた両手はビクともしなくて、もちろん体も動かせない。もう私に動かせるのは目くらいだけれど、それも、彼の瞳が逃がしてくれない。
「つよい、」
zm「せやろ。」
掴まれた手首に力が加わる。
「ゾム、い、いたい、」
zm「せやろな。」
誰だこれは。いや、ゾムなのは分かってる。そうじゃなくて。
目の前の彼が、怖い。
「こ、こうさん。」
痛さで生理的に涙が出てきた。
それを見たのかゾムはハッとした顔をし、私の上から飛び退いた。
zm「A、す、すまん、やりすぎた。」
「だいじょうぶ……。」
彼の意図が分からないほど馬鹿じゃない。彼は、怖さとか痛さとか力の差とか、そういうのを教えてくれようとしたんだろう。
「とりあえずゾムが強いってことと私がむちゃくちゃ弱いってことは分かった。」
zm「あと本気の男にそんな簡単に勝てへんからちゃんと逃げるべきやでってことも分かっといてや。」
まぁ女でも前線出てるようなやつは少なくともAよりは強いから逃げてほしいんやけど、とつけ足す。余計なお世話だと言えないのがつらいところだ。
zm「A思ったより弱いなぁ……。とりあえず基礎体力と筋力つけつつ、ナイフの扱い方からかなぁ。」
ぐさぐさ刺してくるねゾムサン。ひとつも否定できないんだけどね!
少ししょんぼりしているとつけ足される。
zm「まぁでも気配読むんはわりと出来るしAには自前の道具もあるんやしなんとかなるって!俺に任しとき!」
そうして私の日課に彼との戦闘訓練が加わったのだった。
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ツネキ - お話のつなぎ方、お上手ですね…。いいな…。私の場合、文章を書こうとしても話がコロコロと変わってしまって…。それプラス話の繋ぎ方がどうにも下手くそで、へんな文章が出来上がってしまうんですよね…。尊敬です…!! (2020年3月11日 5時) (レス) id: b7a49d6e6e (このIDを非表示/違反報告)
こは(プロフ) - 雪兎さん» 雪兎様、応援とご心配ありがとうございます。全然無理はしていないので大丈夫ですよ!拙い作品ではございますが、これからも楽しんでもらえると幸いです*^^* (2019年12月5日 23時) (レス) id: ce808de654 (このIDを非表示/違反報告)
雪兎(プロフ) - いつもいつもお疲れ様です。これからも頑張って下さいね!応援してます!あっ、無理は禁物ですからね!お体に気をつけて下さいね? (2019年12月5日 20時) (レス) id: 2fbdad1c3b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こは | 作成日時:2019年11月23日 20時