選択肢を差し出した ꒰ঌ 天利 ページ3
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ゆっくり着実に開かれたエメラルドグリーンの瞳に 幾分か歪んだ僕の姿が映ったような気がした。
りーちゃん。そう呼ばれた彼女はわけが分からないといった様子で僕の顔をじっと覗き込んでいる。
それもそうだ。僕と彼女との面識なんてたったの1度もないし、りーちゃんなんておかしな渾名を考えたのもほんのいまさっきだから。
彼女から離された手をそのまま顔の近くに持ってきて、人差し指で口角を上げる。それからできる限り目を細めて笑いかける。
｢僕はこはく！煌儚こはく！
ねえりーちゃん、一緒にサッカーを守りに行かないっ？｣
｢……え？｣
突然僕の口から飛び出してきた提案に当惑しているといった様子のりーちゃんは、緩徐に自分を指さした。
そうだよ、りーちゃんって言うのは君……森楪月彗霖のことだよ。
どう呼ぼうか迷っていた僕の脳内に浮かんできた、簡単かつ覚えやすく、そして呼びやすそうな渾名。
彼女はそう呼ばれたことなんてたったの1度も無いような反応を見せたので、きっと僕がりーちゃん呼びの第一人者になることだろう。
｢勿論無理にとは言わないよ！
このままさっさとお家に帰ってぜ〜んぶ無かったことにしてもいいんだよ？｣
｢ちょ、ちょっと待て…何も状況が分からない、んだけど……？｣
｢分からないのも無理はないよ。だって忘れちゃってるんだもん｣
｢忘れてる？何を？｣
｢森楪月彗霖という1人の人間を形成していた物事だよ｣
君だけじゃないよ。さっき話してた神童拓人くんとか、松風天馬くんとか、後君と同じクラスの空野葵ちゃんとか西園信介くんとかが分かりやすい例だろうか。
……と言ったところで今のりーちゃんに理解出来ることは無いに等しいので何言わないことにした。
｢これからこはくは…こはく達はサッカーを救いに行くの。
それはりーちゃんが居ようと居なかろうと、絶対そうなるの｣
そういう未来がそこにあるからね。
｢どうせアレを直してしまえばここでの会話も無かったことになるし……えっと、だからつまり、りーちゃんの自由ってこと！｣
ぽかんとしているりーちゃんの為にとそんな曖昧な言葉を付け足す。
……が、こればかりは何も覚えていない相手にいくら伝えたってしょうがないことだ。いつか思い出すよ。多分。きっと。上手くいけば。
今頃あの子は何をしているのだろうか。一見関連性のないそんなことを考えながら首を傾げた。
｢どうしよっか。こはくと一緒に来る？来ない？｣
続く (更新停止中)
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←多分、おれら疲れてんだよ ✽ 愛乃
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