煌めく彗星【イナGO】 (ページ18)

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大丈夫だよ　✽　愛乃ページ18

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「ねぇ、りーちゃん！」

トントン、と二回肩を叩かれたかと思うと先程とは変わって弾んだ声が上から降ってくる。

何を本人を目の前にくよくよ唸ってんだおれ。しっかりしないと、まだ入学式すら終えてないんだぞ。

彼女が指差すほうを見れば、既にユニフォームに着替えた拓君たちが小さく運動をする姿が目に入った。

…先程と変わらず、神経的で不調和な空気が漂っている。

邪魔をしてはいけないなと感じ、静かに退散することを提案しようとしたが……既にこはくの口からは元気で明るく天馬君の名が発せられていた。

「こはく！？それに森楪月さんも！」

「！彗霖！？」

「さっきぶりだな、天馬君。それに拓ｋ…し、神童せんぱいに霧野せんぱいも」

言い直した言葉は少し彼らの気に障ってしまっただろうか。

微妙に歪んだような顔をされた気がするが、学校にいる限りおれはただの新入生であり後輩の一人であるわけだから割り切って頂きたい所存。

ごめん。普段はちゃんといつも通り呼ぶから許してくれ。

「こはくも森楪月さんも、なんでここに？」

「そりゃあ、皆の応援に来たに決まってるじゃん！」

「人込みに流されてここにたどり着いたとかそんな、なぁ」

「りーちゃん全部言っちゃってるんだけど」

「幻聴だよ」

新入生同士気が合うのかぽんぽんと言葉が出てくるこの感覚は久々で、なんだか面白い。

先程のピリピリした空気も少し緩和された……ような気がする。

そんな中、聞き馴染のある声が俺に一言投げかけてきた。

「彗霖。お前、大丈夫なのか…？」

「何が？」と言わんばかりのこはくや天馬、雷門イレブン達の目。視線。形相。

いつもと違った声色……でも、この場の雰囲気に似つかわしい。

そんな声を発するのは、蘭くんもとい霧野せんぱい。…何気に今日初めて会話を交わした気がする。

「…うん。ごめんね」

ああ、今日はよくこういう目を見るな。やっぱりあの時と変わらない。

置かれてる時間も立場も全く違うはずなのに。

……訳もわからず謝るおれに、蘭くんは静かに、「そっか」と言葉を零した。

なんとも言えないこの空気の中、グラウンドから選手入場のアナウンスが流れて来たのは、きっと、不幸中の幸いだろう。

「ほら、呼ばれてんぞ！頑張ってこいよ！！」

彼は今、どんな感情でおれを見ていたんだろう。

そんなことを考えながら、逆光に紛れる彼らの背中を、こはくと2人でただひたすらと見守っていた。