煌めく彗星【イナGO】 (ページ2)

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はじめの一歩　✽　愛乃ページ2

その日は、朝日が眩しい春の日だった。

目をしっかり開けていなければ、思わず眠気に身を委ねてしまいそうな…

「……寝てないだろうな」

「……………はっ…」

＿＿＿＿卯月

目を開く先には切りそろえられた春らしい淡い色の花壇が目に映った。

不規則にゆらめく桜の影に意識を紡いでいると、軽く後頭部を小突かれる感覚が走った。

伸びてくる手の主も、頭上から降ってくる声も、勿論聞き馴染のある、あいつだ。

「えへへ～…昨日の夜眠れなくて」

…なんてことを言ってみる。

彼の耳にどういう形に届いたのかは、誰もわからない。

ただ彼は、ぐちゃぐちゃと絡み合う心をすっとほどくように「ところで」と言葉を流した。

「本当によかったのか？こんな早い時間で」

「うん！せっかくなら学校回っておきたいし」

「…転ぶなよ」

「保証はできん」

少し…いや、かなり心配した顔でこちらを見るのは、おれの幼馴染の神童拓人。通称拓君。

おれの新しく入る学校の2年生。いわゆる先輩ってやつだ。

……言っていなかったけど。実は今日は、雷門中学校の入学式だったりする。

雷門中といえば、サッカーの強豪校でよく知られている。
サッカー好きでこの学校を聞いたことない人なんて、きっといないだろう。

そんな学校に、いかにも“サッカー”という言葉が似合わない人間が、足を踏み入れようとしている。

「じゃあ俺は朝練に行ってくるから。…気が向いたら、いつでもこいよ」

「はーい。練習頑張れ拓君！」

小さな気遣いに心がほっこりとすると同時に、彼の手が離れる。
部室へ向かう後ろ姿を小さく手を振りながら見届けると、また少し、不安が頭をよぎった。

瞳には、今のおれには到底似合わない桜の花びらが苛立たしいほどはらはらと舞っている。

形も色も全てが整っていて、すべてが違う。鮮やかで、ことさら美しく咲き乱れている。

こんなに、こんなにも素敵な景色なのに、足元に目を落とすと複雑な心情が自分の中に芽生えてくるのが痛いほどわかる。

複雑で、痛くて、脆い。そんな期待。

「……さて、学校探検でもするかぁ」

重くも軽くもなれない足取りの代わりに、嫌味でも吐くように手に重みが伝わってくる。

この門をくぐれば、雷門生。

手に力を込めると、車輪はいとも簡単に前に進んだ。

せめて最高のスタートを切ってやろうじゃない……か………

あ、やっべ