俺のご主人様

盗み聞き(ひかる ページ39

どうしよう。圭人に聞いちゃった。

宏太様の嘘、知っちゃった。

嘘だと思ってたら……聞いちゃったんだよね。

雄也との秘密のお話。盗み聞きしちゃった。

……最初は、恨んでた。

圭人を奪った中島裕翔が憎くて、

その兄貴分の宏太様も憎かった。

でも、よくわからない経緯で拾ってもらって、

よくわからないまま、執事として働いてた。

ある日急に呼び出されて、忠誠を確かめるだの

よくわからないことを言われ、そのまま

今の関係が始まった。抵抗は出来なかった。

これで逆らったら圭人が危ない。

ずっとそう思ってた。

宏太様は中島裕翔と圭人もこういう関係らしいと

いじわるなことばかり吹き込んできた。

たぶん、俺を挑発して楽しんでいただけだろう。

そんなこともあって俺は宏太様が大嫌いだった。

便乗してくる慧様も大嫌いだった。

……それでも、いつからかお二人の優しさを

知ってしまったんだ。

さりげなく出てくる優しさに戸惑ったけど、

ちょっとだけ嬉しかった。

いつの間にか、信頼されてたみたいで、

執事長にまで任命された。

まぁ宏太様は俺が忙しくしてるのを見るのが

大好きだと言っていたからそれもあるんだろうけど。

行為に優しさはなかったけれど、ふと見せる表情が

穏やかで優しくてどこか切なかった。

そして、俺は……宏太様を好きになってしまった。

おかしいよね。男同士だし。

何よりも主と執事だよ？

それに本来、宏太様は憎むべき存在だ。

それでも、最中にうっかり好きって言いそうになる

ぐらいには好きになってしまっていて。

1番仲のいい雄也にすら、全て話すことは出来なかった。

いつからか、俺の負担の軽減とマンネリ化を防ぐため

などと言うわけのわからない理由で、

雄也まで巻き込まれてしまっていた。

自分の気持ちにも整理がつかなくて、ちょっとだけ

辛かった。嫌なはずなのに嫌じゃない。

中途半端でどっちつかず。

そんなとき、山田が来た。

なぜかわからないけど、慧様は山田にご執心。

宏太様は理由を知ってるらしいけど、

面白がるだけで教えてはくれない。

山田が【専属】になるのを阻止しようとしたのは、

負担が大きいことを考えてのことだった。

でも、それとは別に山田が慧様に惚れる気が

したって言うのもあった。

だって鈍感な俺でも気づくぐらい、

慧様に見とれてたんだよ？

そんなの、危ないに決まってるじゃん。

…案の定、すっかり慧様に懐いてるしね。

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