1話 ページ1
出会いなんて本当に偶然だった。
いや、もしかしたら運命なのかもしれない。
迷子になったのか、困り顔できょろきょろしているおそらく俺より10センチくらい背が低い男の子。
「ねえキミ、どうしたの?」
「えっと…あの、教室にどうやって行けばいいか、わからなくて……」
1年2組の山田涼介と名乗ったその子は話してる間一度も目を合わせようとしなかった。
もしかしてこの反応は……何かワケありなSubなのだろうか。
でも、おどおどしながら一生懸命言葉を紡ぐその姿がとても可愛くて。
顔を隠している長い前髪とメガネをなんとかしたらきっともっと可愛いのに、なんて少し残念に思ったり。
山田くんを案内してやってきた1年生の教室があるこのエリアは少し騒がしくて初々しい反応でいっぱいだからなんだか少し懐かしい気持ちになって。
けーと、とかって言う山田くんのお友達と再会できたことを見計らって俺はそっとその場を離れた。
なんでだろう、彼のことがすごく気になる。
あの子の笑顔を見てみたい。
怒った顔も泣いた顔も、全て俺に向けて欲しい。
まさかこれは…Domとしての欲求……?
僅かに痛む心臓を抑えて久しぶりに心の底からの笑みを零す。
たった少し話しただけでこんなに強く俺の興味を引く山田くんに本格的に興味が沸いた。
ああ、これは本当に…面白くなりそうだ。
そして次の日から俺は、
「やっほ〜山田っている??」
彼の元を訪れるようになった。
「…はい、いますけど……」
「あ、山田〜あのさぁ……お前、Subだよね?」
「え……」
驚いた表情は本当に可愛くて。
わざと空気を読まない発言をした甲斐があったな〜なんて。
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作者名:るち | 作成日時:2021年3月9日 22時