センパイ (ページ43)

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43話(圭人視点) ページ43

聞こえてきた声に嫌な予感はしてた。

それでもやっぱり見えてきたものは予想を上回る酷い光景だった。

「…大ちゃん、あれって……」

「あぁ、山田…だよな。それにあれは…味澤？」

味澤くんとその取り巻きだった子たちと知らない大人たち合わせて約10人、そしてその人たちに囲まれて床に座り込むやまちゃん。

髪の毛も制服もぐちゃぐちゃで汚れてて力が全て抜けてるような、抜け殻みたいな姿で……

「反応薄くてつまんねえな」

状況を理解するほど体の奥底から強い怒りが沸き起こってくる。

「…大ちゃん、行くよ」

「おう」

ドアを大きな音を立てながら開けて殴り込んだ。

「やまちゃんから離れろ！」

「お前ら絶対許さねえ…！」

近くにいた人から殴ってやまちゃんから遠ざけていく。

人を殴るなんて人生で初めての経験でほんのちょっとだけ手が痛いけどそんなこと気にする余裕もないくらい夢中になってた。

「Defense状態のDomが2人、ねぇ……」

「なぁ、岡本クンだよな？山田クンがどうなってもいいわけ？」

慌ててパッと振り返るとさっきよりも青白くなっているやまちゃんの顔を掴む味澤くん。

光の無くなったやまちゃんの目に映る自分が想像以上に怖い顔をしていて。

そこで一気に冷静さを取り戻した。

「…物分りがよくて助かるよ、岡本クン。はい、Switch」

あ、と気づいたときはもう遅くてその一言で自分から放たれてたGlareも消えていくのがわかった。

それと同時にSubになったからわかる大ちゃんや他の人のGlare。

それが大きな圧になって押し寄せてくる。

「おい圭人！大丈夫か！？」

「有岡クン、動かない方がいいよー？」

「これ以上暴れるならこの2人…どうなるかわからないよ？」

「…くそ！」

大ちゃんのGlareも弱くなった。

それを確認してニヤニヤ笑ってる大人たちはそのまま大ちゃんを縛る。

「岡本クン、こっちおいでよ。山田クン、返してあげる」

嘘だ、絶対何か企んでる。

そうはわかっていても今はやまちゃんの状態を確認するのが最優先事項。

やまちゃんを抱きしめようと手を伸ばしたら、

「おりゃあ！」

背中に衝撃が走った。

きっと何かで殴られたんだ。

せめてやまちゃんにこれ以上痛い思いをさせないようにぎゅっと強く抱きしめた。

「…ごめん、ごめんねやまちゃん……」

「やめろお前ら！」

「お前は黙っとけよ！」

見えないけどきっと大ちゃんも殴られてる。

鈍い音がたくさん響いてその中に大ちゃんの声も聞こえてきた。