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32話 ページ32

「やまちゃんはいのちゃん先輩にpartnerになることと正式な交際を申し込まれたってこと…?」

「……俺はそう思うね」

「…俺は……わかんねえよ」

だって先輩はいつも1番大事なところを言ってくれない。

俺の欲しい言葉なんかすぐにわかるくせに答えだけはくれないんだ。

「…あ、あれじゃね?ほら、俺と先輩って仮にとはいえ付き合ってることになってるからじゃねーの?」

隠してはいなかったからみんな俺がSubだってことは知ってる。

Domの先輩とSubの俺が付き合うならpartnerであることも想定されるんじゃないか。

そう考えたら納得出来て。

でも、それと同時になにか別のもやもやが生まれた気がした。

「…まぁ、本人に聞かなきゃわからないよね」

「山田がCollarって思うならCollarだと思うし、違うと思うなら違うんじゃねえの?」

「…そうだね」

肌触りもいいし、優しい色合いの青がとても綺麗だ。

この色、きっと先輩に似合うんだろうな。

あの人は肌が白いからかえってこういう明るい色が似合うんだよな。

うちの制服のネクタイも先輩は似合ってるし……

「やまちゃん?おーい、やまちゃーん?」

「へ?え、なに?」

「山田、それ見てニヤニヤしたまま意識どっか行ってたぞ」

「え、そうなの?うわぁ…恥ずかし……」

「ほら、付けてみろよ」

「うん…」

「どう?付け心地いい?」

「すっげぇいい」

心があったかくてぽかぽかする。

この優しい温もりがまるで先輩にcareされてるときみたいで。

いや、Sub Spaceに入ったときみたいだ。

先輩に褒めてもらって頭撫でられて抱き締められてSpaceに連れてかれたときと同じ感覚。

幸せでいっぱいになって、穏やかな気持ちになる。

「…ふふ、それがあればやまちゃんは当分大丈夫そうだね」

「だな。安心したわ」

「…あ、やっべまただ……」

「お、帰ってきた」

「ほらやまちゃん、帰ろ。お母さん心配するよ」

「そうだな、ごめん。早く帰ろうぜ」

手首にはまったリストバンドにそっと手をやって歩き出す。

これがある限り、俺は安心していられるかも。

今だけは先輩に感謝してやってもいいかな、なんて。

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作者名:るち | 作成日時:2021年1月12日 11時

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