センパイ (ページ15)

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15話ページ15

「あ、山田～」

今日もあの人は急に現れる。

ほら、今だって部活に行こうとしたら待ち伏せでもしてたんじゃないかって疑いたくなるくらいちょうどいいタイミングで俺の目の前に来たんだから。

「ねえ山田、今日も部活でしょ？」

「…まあ、毎日なんで。どうかしたんですか」

「んーとね、とりあえず部活中もなるべく大ちゃんと一緒にいた方がいいよ。熊田くんでもいいけどね」

「普段から大ちゃんとは一緒にいますけど…」

「前も言ったと思うけど常に誰かに見られてるって思ってた方がいいよ。狙われてるかも…ってね」

「そんなの、言われなくたってわかってますよ」

余計なお世話だ。

この人は過保護なんだか、俺を子ども扱いしてるのか…

「わかってないじゃん、今だって1人で歩いてる」

「それは……！」

「おい山田！グダグダ立ち話してないで早く部活行くぞ！」

「すいません、キャプテン！…じゃあ、伊野尾先輩、さよなら」

キャプテン……熊田先輩は俺が本入部すると喜んで迎え入れてくれて、他の同級生よりも厳しい指導をされた。

もちろん俺はキャプテンを尊敬してる。

この学校のサッカー部は特別強いだけあって少し特殊なルールがあった。

まず、学年ごとに1人キャプテンがいてその人たちは学年キャプテン、その中でもここでいう熊田先輩みたいな部活を取り仕切る人なら部活キャプテンと呼ばれるんだ。

ちなみにキャプテンの決め方は自由で、必ずしも実力で決めるわけではないらしい。

俺たちは立候補制で決めて、先輩の代は実力勝負で決めた。

さらにサッカー部専用エリアと呼ばれる校庭のとあるスペースで行われる部活は実力や学年に関係なく、基本的には同じメニューで行われるけど、途中から変わる。

スタメン、もしくはベンチ入りするメンバーが属するグループがいわゆる一軍で、その予備軍となるその他の人たちが二軍。

一軍は二軍よりだいぶメニューがきつい。

しかも一軍か二軍かは確定じゃない。

俺と大ちゃんは一軍に入れてもらえたけど、もしかしたら今日急に二軍行きを言い渡されるかもしれない。

厳しい競走を勝ち抜いた人だけが試合に出れる。

ここは、そんな世界だ。

「山田、お前本当によくそのメガネと前髪でそこまで動けるな」

いろいろな先輩や同級生、監督にまでよくそう言われる。

俺の返す言葉は決まっていて。

「たくさん練習したんですよ、サッカー大好きなんで」

……でもきっと、それが面白くなかったんだろうな。