小春日和 2 (ページ20)

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ちぃが初めてこのシェアハウスにやって来て病気のことを話したとき、｢迷惑をかけると思いますが｣って俺より年下のはずのちぃが頭を下げるのを見ていられなかった。

どうしようも無いことなのに、まるで自分の責任かのように話す言葉を聞いていられなかった。

この子はなにも悪くないのに。

涼｢俺は、久しぶりにちぃとゲームできて楽しかったよ｣

侑｢……ん、｣

涼｢ちぃは？楽しかった？｣

侑｢……たのしかった、｣

涼｢良かった。じゃあ、また一緒にやろう。別に今日じゃなくても、一緒に住んでるんだから時間はたくさんあるよ｣

安心させるように、まだ冷たいままのちぃの手をゆっくり擦りながら話しかける。

割り切っているように見せているだけで、可愛い笑顔の裏に隠れている抱えられたたくさんの柔くて弱いところを、出来る限りの優しさてで触れて、溶かしてあげたいから。

ちぃがゆっくりとした動きで、俺の顔に手を伸ばすから包み込んでいた手を離すと、まだ乾ききらない涙の跡を拭われた。

侑｢……りょうすけ｣

涼｢ん？｣

侑｢…ありがと｣

涼｢うん。どういたしまして｣

自分は涙の跡を残したままで、にこっと微笑む可愛らしい顔が暗くならないよう、俺たちがちゃんと支えるよ。
迷惑だなんて思わないし、なんなら迷惑かけて欲しい。

なんたって、ちぃはこのシェアハウスの末っ子だから。

慧｢良い子だねえ、君たちは。おじさん嬉しくなっちゃったよ｣

涼｢なんだよ、急に｣

慧｢家族って良いね｣

侑｢……へんないのちゃん｣

慧｢え〜酷いなあ｣

間に挟まって俺たちを見守っていた伊野尾ちゃんは、にこにこ目を細めて満更でもなさそうな反応でもう一度俺とちぃの頭を撫でた。

大きくて、綺麗な手のひらにちぃが擦り寄るのを見て、そうやってこの先も遠慮することなくたくさん甘えてくれると良いなと、心の中で願う。

多分、伊野尾ちゃんも。
どうしようもなく大人びてしまうちぃの心休まる場所でありたいと。

冷たかったちぃの手も少しずつ温かさを取り戻しているようで、安心した俺はもっと温かくなれと、ぎゅっともう一度包み込んだ。

fin.