小春日和 2 (ページ13)

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やっと落ち着きを取り戻した侑李は、苦しさを残しつつ幾らか話しやすくなったのかぽつりぽつりと途中何度も詰まりかけながら話し始めた。

怖かった。寂しかった。辛かった。
事故の日のことは今でも夢に見るし、頑張ると決めたリハビリも本当は辛くて痛くて辞めたいと言ってしまいたかった。でも、それよりもすっかり変わってしまった家が怖かったんだと。侑李はまた涙を流した。

自分の為に父さんが頑張ってくれたと知って、実際にそれを見て改めて自分の状況を思い知らされてしまったと。普通じゃない。誰かの手を借りないと生きていけない。それが怖くて、辛いと。
「ありがとう」と笑った侑李を見て安心したように頬を緩めた父さんを思い出す。言い出せなかったんだよな……父さんがどれだけ必死にバリアフリーへリフォームしたかを聞いたから。

優しい。優しい侑李。
自分よりも相手のことばかり思いやってしまう。まだほんの子どもなのに。まだ守られるべき存在なのに。

「……あとね、がっこ…も」

「学校？」

「……ん。おともだち、できた……けど」

「うん」

「さみ、しい……」

前の学校のみんなに会いたいよ。消え入るような声を聞いて、思わず涙が流れてしまった。
事故さえなければ、今頃侑李は同じ小学校だった子たちと同じ中学校へ通えていたんだ……

「ごめん……なさい」

なんで謝るんだ。侑李は何一つ悪くないのに。
誰一人悪い人はいない。あれは、不慮の事故だった。
……そう思わないと俺は誰かを恨んでしまう。

「いえなくて……、そしたら、ちょっとずつ、くるしくなっちゃった……」

「言いづらかったよな……教えてくれてありがとう」

「……んーん……ねえ、」

「ん？」

「おとーさ、と……おかあさん、には……ないしょに、して？」

きっと泣いちゃうから。と、まだ熱の引かない赤い顔でじっと見詰められて、俺は「約束する」と言って侑李の頭をくしゃりと撫でた。

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