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世界王者の弱音/Yuzuru ページ19

結「Aが男だったら良かったのに」

結弦はホテルでそう呟いた。
大会の後、お疲れなはずの結弦。そしてお疲れの私。
なのに彼は突然部屋に来て、ソファを占領している。
その挙句、訳の分からないことまで言い出して。
「男だったら、こうして恋人なれてないって」
疲れているのか、少し意地悪してやろうとそう返す。
グラスに水を注いで、冷蔵庫にペットボトルを仕舞った。

結「違うよ。Aが男だったら、俺のこと負かしてたでしょ」

私は、グラスを煽ろうとしていた手を下ろす。
結弦の顔は、今まで見たことが無いほどに悲しそうで、辛そうで、そしてなにより疲れていた。
そして私はすぐに理解する。
今の結弦は世界王者でもフィギュアスケーターでもない、弱い心の結弦だ。
「昌磨も頑張ってたじゃん」
結「そうだよ。だからこそ、だよ」
結弦はソファで体育座りをして、顔を埋める。

結「次も負けられない、絶対的な世界王者じゃなきゃ駄目で、負けたくないのに負けたいって思っちゃう」
私は喉に水を流す。

結「世界王者なんて、ただの圧でしかない」

純粋にスケートを楽しめたあの時に戻りたい。
彼はか弱い声でそう呟いた。
私の耳に届き、空中へと消えていったその言葉。
私は結弦の隣に座って、天井を見上げる。
そして、結弦を抱き締めた。

強くはないけど、しっかりと。
結「...A」
「でも、スケートは辞めないんでしょ?...なら、まだお互い頑張ろうよ。結弦が、私を圧倒的に負かすまで」
月並みの言葉しか言えないけど、ずっと一緒に居る彼の唯一の回復薬となれるなら。
結「うん...うん、頑張る」
結弦は嗚咽を漏らし、静かに泣いた。

私は結弦を抱き締めたまま、静かに彼が落ち着くまで待ち続ける。

世界王者の弱音は、そこらの一般人よりも弱くて小さくて柔いもので。


「...おやすみ」

泣き疲れて寝てしまった結弦に、微笑んだ。

酔っ払い/Yuzuru→←Not Friend./Shoma



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琥珀糖(プロフ) - ぬさん» リクエストありがとうございます。とても素敵なネタですね!頑張って書きます。これからもよろしくお願いします。 (2018年4月1日 22時) (レス) id: da50392b08 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀糖(プロフ) - astroyuzさん» コメントありがとうございます。主の性格には特に気を付けましたので、そう言って貰えると嬉しいです!これからもよろしくお願いします。 (2018年4月1日 22時) (レス) id: da50392b08 (このIDを非表示/違反報告)
- 昌磨君と幼なじみのスケーターさんでエキシビで昌磨君にプロポーズされる小説お願いします (2018年3月30日 8時) (携帯から) (レス) id: b271d24507 (このIDを非表示/違反報告)
astroyuz(プロフ) - 男主のお話がとても好きです。いい男なんだろうな、と楽しく拝読いたしました。ヒロイン嬢もおかわいらしく、癒やされました。この先の更新も楽しみにお待ち致しております。 (2018年3月28日 11時) (レス) id: afb95e6422 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀糖(プロフ) - なほなりさん» コメントありがとうございます、気付くのが遅れて申し訳ございません!そう褒めてもらえるととても嬉しいです!これからよろしくお願いします。 (2018年3月16日 17時) (レス) id: da50392b08 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:琥珀糖 | 作成日時:2018年2月25日 22時

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