琥珀の判断 ページ5
(逃げれば兵たちの命はない......かといってこのまま戦っても我が負けるのも目に見えている。どうする......)
(これは止めた方がいいのか。それとも......)
実の姉を殺めるのにとても抵抗があるきぃ。だが、ここで殺めなければ任務が失敗する。
「......」
琥珀は短く歯軋りをした後、大きく口を開き、こう言った。
「全軍！ 退避体制！！ 無傷の者は負傷した者を運び出せ！ 死んだ者には一切構うな！」
「......！」
「尚、生き残った者には褒美を遣わす！」
それを聞いた琥珀の兵は、一斉に琥珀の言った通りに動き、見事に退避を果たした。
だが、琥珀はまだ残っている。
「......行かないのか......？」
「木ノ下様、早に退避をなされた方がよろしいかと」
きぃと琥珀の兵がそう訊く。琥珀は兵の方を向き「分かっておる。暫し待たれよ」と言う。
そして琥珀は再び二人の方を向き、苛立ちが残る顔で二人の顔を交互に見つめた。
「......その首、洗って待っておれ。決して他の者に取られるでないぞ。その首は我が頂く。その事を肝に銘じておけ」
「......」
それは、琥珀なりの二人への心配であった。実の妹であるきぃにはそれが分かった。
「絶対に死ぬな」
琥珀の目はそう言っていた。そして後ろを向き歩き出そうとしたとき......
「分かった......誰にも渡さないことは誓おう......」
きぃがそう言った。琥珀は踏み出そうとした足を止め、きぃのその言葉を背中で聞くと、兵の用意した馬にまたがり、手綱を引いて消え去った。
「......」
武士の世では、相手の背から不意打ちを食らわすのは武士の恥だということで、きぃも柊もそれ以上深追いはしなかった。
「......柊、戻ろう......」
「......ああ。もうすぐこの戦も終わるだろう」
そう言って二人は各々の陣へと戻って行った。
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琥珀‐KOHAKU-(プロフ) - 感想やアドバイスなど、ご自由にご記入ください！できるだけ返事をいたします。 (2019年10月7日 1時) (
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作者名：琥珀‐KOHAKU- | 作成日時：2019年10月7日 1時
