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琥珀の客人 ページ33
「疾風、桜」
「はっ......」
「......」
ある日、琥珀は城の門前に来て、忍の疾風と桜を呼んだ。呼ばれてから桜は、今日は『あの日』だと気付いた。
琥珀は毎年のこの日、必ずこの二人を門前に呼ぶのである。
もう来たのか、と疾風は僅かに目を細める。
「知っての通り、今日は彼奴が来る日ぞ。......いつもの通り、警護を頼む」
「了解です」
疾風に続き桜も返事をしようとしたとき、三人が居る道の向こうから声がした。
「琥珀ゥー!」
「......」
琥珀はしばらく固まった。まだこの時間には彼奴は来ない筈だったからだ。
「......いざというときは御守り致します、琥珀様」
桜が脇差に手を重ねると、琥珀は呆れ顔で「殺す価値も無いだろう」と桜を止めた。そうこうしていると、声の主がこちらへ走ってきた。
「......来ましたね」
日輪の陽を跳ね返す薄い茶髪を後ろで束ねている女子が、こちらへ向かって大きく手を振って走ってくる。髪も振り乱し、まるでだらしない様子のそいつは琥珀達の前まで来ると、膝に手をつき肩で息をした。
「はあっ、はあっ......間に合ったぁ」
「我等としては間に合うて欲しくなかった」
疲れてなおも笑顔を崩さないそいつに、琥珀は冷たい視線を送った。
「......アンタ、なんでこんなに早いのさ」
止めはされたが未だに脇差に手を添えながら桜は警戒の色を隠さない。
「だっていつも通りの時間だったらみんな門閉めて私を追い出すもんだからさぁー。早めに来たって訳」
「来て欲しくないが故に追い出しておるのに、貴様やりよったな」
「......如何致しますか、琥珀様」
桜が琥珀の方を見て言う。琥珀は、抱きついてくるそいつを俊敏に避けた後、溜め息を吐いて「......入れてやれ」と答えた。
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琥珀‐KOHAKU-(プロフ) - 感想やアドバイスなど、ご自由にご記入ください!できるだけ返事をいたします。 (2019年10月7日 1時) (レス) id: 7c741c0c9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:琥珀‐KOHAKU- | 作成日時:2019年10月7日 1時