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虚空 ページ29
「貴様は忍として生まれた以上、忍として生きねばならぬ。忍というものは他のどんな役よりも苦渋をなめる思いをしなければならない。下手をすれば死ぬような世ぞ。それでも覚悟を決めぬのか」
どこか自分にも言っているような言い方で優に語りかける琥珀に、優は曖昧な返事しか返せないような気がして、口をつぐんだ。
とそこに、大きな波が押し寄せ、船全体が同じく大きく揺れた。体の軸をぶらしそうになった二人は咄嗟にへりをつかむ。
「......あ......鳥さん」
ふと鳴き声がして優が上を見ると、そこには確かに空に大きく翼を広げて風を切るうみねこの姿があった。優にとっては、いてくれて助かったという心境だった。何か話題を変える口実が欲しかったのだ。
「港は近いな......」
同じく見上げた琥珀が呟く。
降り際、琥珀は優にこう告げた。
「......我は、海の藻屑になるよりは生まれ育った陸で死んだ方が良い。......そう思う」
優は「確かにね......」と、言いようの無い感慨深さを感じるのであった。
二人はまた孤独に空を仰ぐうみねこを見上げ、安芸国へと足を向けた。
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琥珀‐KOHAKU-(プロフ) - 感想やアドバイスなど、ご自由にご記入ください！できるだけ返事をいたします。 (2019年10月7日 1時) (
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作者名：琥珀‐KOHAKU- | 作成日時：2019年10月7日 1時
