常無 ページ2
きぃは主である元就から、平原の中心に攻め入り、陣を張れと命令されていた。
だから、ここは絶対に切り抜けなければならなかった。
琥珀は既に陣を張る準備をしており、きぃをまっすぐに見据えていた。
あんなに表情豊かだった琥珀は、しばらく見ぬうちに『常無』とうわさされるまで常に無表情になってしまった。
馬にまたがったままのきぃから見ても、その雰囲気は容易に感じられた。
しばらく見合っていると、琥珀は突然腰に差していた刀を鞘ごと引き抜き、きぃに向かい突き出した。
琥珀はそのままきぃの方向へゆっくりと歩いて行く。
きぃは一旦馬から降り、迫ってくる琥珀を只見ていた。
すると琥珀は刀を引き抜き一気にきぃの元へと駆けた。
「......」
「......!?」
攻撃に備えてあわてて刀を引き抜いたきぃは、迫り来る琥珀から距離を取ろうと後ろに飛び退いた。
だが、琥珀の走る速度は緩まない。
一気に間を詰められたきぃは、上段で斬りかかってきた琥珀の刀を間一髪で防いだ。
辺りに、刃が交わる音が響く。
「......はッ......」
その音でようやくまわりの音声が聞こえてきたきぃは、まわりを見て愕然となった。
「......あ」
気迫のある声を上げながら相手に斬りかかっている者から、呆気なく殺られてしまっている者まで、様々な者共がきぃ達の回りで争っていた。
「......他所を見る癖は相変わらぬな」
「......」
琥珀はそう言い、すぐにきぃの胴目掛けて刀を振った。
『キィン!』
またも間一髪で防ぎきれたきぃは、改めて琥珀の顔を見据えた。
「......」
このままではまずいと、きぃは一旦退いてから琥珀に向かって斬りかかった。
「......ハァッ!」
「ッグ......」
攻撃は琥珀の腕に掠り、僅かな切り傷を作った。
琥珀が怯んだその隙を見逃さず、きぃは更に斬り込んだ。
「ハッ!」
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琥珀‐KOHAKU-(プロフ) - 感想やアドバイスなど、ご自由にご記入ください!できるだけ返事をいたします。 (2019年10月7日 1時) (レス) id: 7c741c0c9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:琥珀‐KOHAKU- | 作成日時:2019年10月7日 1時