恋に焦がれて愛にゆく【ファンタスティックビースト】

ブロードウェイ 夜 ページ28

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クイニーの杖の一振りで、干しぶどう、りんご、パイ皮が空中に現れる。材料がひとりでに巻きこまれて、きちんとした筒状のパイになり、その場でパイが焼かれ、見事なデコレーションも付いているし、粉砂糖も振りかけられていた。


ジェイコブは深く息を吸いこむ。ああ、天国だ。


ティナはテーブルのキャンドルに火をつける──食事の支度が整った。


ニュートのポケットから小さなキーキー声がして、ピケットが物珍しさに顔をのぞかせた。


「ほら座って、スキャマンダーさん、 A。毒は入ってないわ」


「ええ、もちろん、ニュート、座りましょ？」



ニュートはまだ座ってなくうっとりしたように頬を染めAを見つめている。



ジェイコブはそんなニュートを座らせようとして、それとなくニュートをにらんだ。




***




遅い食事をとる人たちや、劇場に向かう人たちなど、世俗的楽しみに浸る人々の中を、クリーデンスがひとりで歩いている。


車が騒がしく通り過ぎていく。クリーデンスはビラを配ろうとするが、胡散臭そうな目やかすかな嘲りに出会うばかりだ。


ウールワース・ビルが目の前に現れる。


クリーデンスはちらりと憧れの目を向ける。


グレイブスがその外に立って、クリーデンスをじっと見つめていた。その姿を見つけたクリーデンスの顔に、希望の光がよぎる。



すっかり心を奪われて、クリーデンスはグレイブスのほうへと通りを横切っていく。



自分が向かっていく先さえ見ていない──ほかのことはすべて忘れ去っている。










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