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「この席みたいです」

内野指定席SのエリアにAと紗結はやって来た。

翔平からの招待席としてチケットをもらっていたのである。

「わぁ、視界良好な席ね」と紗結。

ベンチ後方から観戦できる上級内野指定席だ。

それでも一般シートのため、翔平からは「スペシャルシート(ボックス席など)かプライベートルームでも招待できるんだけど」と言われたが、一般席を選んだ。

プライベートルームを使うほどの人数でもないし、ボックス席は逆に注目浴びそうだしと思った。

ま、ただ単に一般シートのその席が一番だと思ったからなんだけど。

Aは翔平に「席に座ったよ〜。紗結さんも一緒^^」とLINEした。

丁度ロッカールームにいた翔平はそれに気づき「今からフィールドに出るとこだったから、手振るね^^」と返した。

そのやりとりを見て内心『ほのぼのカップルか』と笑ってしまう紗結。

そして写真を撮ったりして、球場の雰囲気を味わっているとヒソヒソと話が聞こえて来て断片的に『megami?』という単語が紗結の耳に入って来た。



「あの人、megamiに似てない?」

「どこどこ?」

「あそこの席に座ってる人。キャップかぶってメガネかけてるけど、あの小顔といい、スタイルといいmegamiに似てる」

「ああ・・・そう言われてみれば・・」


え・・・バレてる?

紗結は血の気が引いていくのを覚えた。

しかし、当の本人は球場の写真撮影に余念がない。

「Aちゃん」

小声で名前を呼ぶ紗結。

「はい?」

「え・・・と・・・」

この場合どうしたらいいんだろ。

この席を立って逃げるほうがいいのか。

でも、そうすると戻ってこれなくなるし・・・。

「どうしました?」

紗結の様子がヘンだと気づくA。

「あ、もしかしてお手洗いですか?荷物見てますから行って来てください」

「いや、そうじゃないんだけど・・・」

ざわめき→←翔平の物



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作者名:琥珀 | 作成日時:2023年7月15日 15時

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