強制連行 ページ29
「だから、顔だよ顔。可愛い子がいたかいなかったかの話」
「ああ、なるほど」
「翔平は相変わらず興味なさそうだな」
「っていうか練習中に何やってんですか」
ま、今更だけどと翔平は思いながらも言わずにはいられなかった。
すると中田がやって来て「極上の花丸がいたぞ!」と言った。
「中田さん」
「今からその子達と飲みに行くぞ!」
「中田さんが言うなら期待大ですね!」
キャッホーと盛り上がる選手達。
エレベーターが丁度来たので全員乗る。
1階を押してみんながワクワクしている中、翔平は11階を押した。
「翔平?」
「夕食会場、11階ですよね」
「何言ってんだよ!おまえもこのまま1階まで行ってタクシーに乗るんだよ!」
「ええ?オレは行きませんよ!」
中田は他の選手達に目配せすると、翔平は両端からガシッと掴まれた。
「ちょ!何するんですか!」
「いいかそのままタクシーに乗り込むまで離すなよ」と中田。
「御意!」
そして逮捕された犯人のように翔平は後部座席の真ん中に座らせられていた。
「翔平ちゃーん、そんなに絶望せんと」
「今から沖縄のおいしい料理を食べに行くのに」
「フン」
着いたらそのままこのタクシーでとんぼ帰りしてやる、と翔平は思った。
しかし、タクシーを降りる時にまた両端からガッシリと捕まえられていて、そのタクシーは去って行ってしまった。
翔平の企みなどお見通しだったようだ。
低層階ビルの屋上にあるレストランへと向かい、テラス席へと案内された。
「中田さーん!」
かわいい女性の声がした。
テーブルに着座している女子5名が手を振っている。
その中に久我がいた。
「お待たせしてごめんね」
中田がそう言いながら久我の隣に座り、他の選手達も女子の間に座っていく。
翔平は(中田さん、何かわいい声出してんの?キモ・・・)と心の中で思いながら、残りの席に適当に座る。
右隣は同僚、左隣は5人の中でもフツメンの女子だったのでかえって安心した。
ケバイ女子は苦手である。
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作者名:琥珀 | 作成日時:2023年7月15日 15時