【渡された合鍵と朝の新聞】 ページ2
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桧室が家にやって来てから、一気に賑やかになった。昨夜から彼女のペースに振り回され、中原は少々疲弊気味ではあったが、もう其れは慣れていくしかないのだろう。
寝室にて寝間着から仕事着に着替え、再び戻って来る。
「中原さん、はいこれ」
どーぞ、満面の笑みを浮かべている彼女に渡された。
朝食の御菜の何品かを、タッパーに詰めるだけと云う簡単な弁当だ。それでも、中原の胸の奥はじんわりと温かくなってくる。
彼は頰をポリポリと掻き、桧室から顔を逸らしたら、「じゃあ 俺からも」と、桧室の手に或る物を渡した。(正確には押し付けた。)
受け取った彼女は不思議そうな表情で、「これは?」そう訊ねたら小首を傾げる。
「見りゃ判るだろ、合鍵だ」
「合鍵......」
彼女に渡したのは、自分の家の予備で作成してもらった鍵だった。中原の方が早く家を出る事の方が圧倒的に多いから、彼女が家を出た後、きっちりと戸締りをしてくれないと困る。
合鍵を渡すのは当たり前だろう。
「......ちゃんと戸締りしとけよ?」
黒外套をバサリと肩に羽織り、中原は桧室に向かってそう云えば足早に玄関の方に向かう。彼女が作った弁当を持って。
バタン...... ガチャンッ
扉を閉められ、鍵が施錠される。
秘密は掌に置かれた鈍色の鍵を握り締めると、「いってらっしゃい」そう呟き、口角を微かに上げて笑みを浮かべるのだった。
***
一人での朝食は久しぶりだった。
何時もは中島と共に食卓についていたから、部屋全体がシンと静まり返っているのが、少しだけ寂しく感じてしまう。
桧室は朝食を食べ終えると、食器を洗って片付けた。
「......独りには慣れていた筈なんだけどなァ、変な感じ」
探偵社に出勤するまで、まだ時間はある。
桧室はチラッと時計を眺めた後、居間に置かれているテレビに目を向けた。
社員寮には無かったから、毎朝朝刊を取り寄せていた。中原の家も新聞を取り寄せているらしく、ソファーの上に今日の日付のモノが置かれている。
「.........」
テレビと新聞を交互に見た結果、桧室は新聞を読む事にした。
「......ッ!? これって......」
ピピピピピピ... ピピピピピピ......
新聞の見出しを見た瞬間、彼女の携帯端末が鳴り響いた。表示された名前は彼女の上司に中る人物____「もしもし、太宰さん?」速やかに通話釦を押す。
『____桧室ちゃん、急いで探偵社に来てくれ給え』
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ミサぽん(プロフ) - 沙羅さん» コメント有難うございます!別作品と掛け持ち故、少々遅れてしまいますが頑張ります! (2020年1月7日 23時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
沙羅 - とでも面白いです!!更新待ってます、、、!! (2020年1月7日 23時) (レス) id: d676b6612b (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - 雛さん» コメント有り難う御座います!とても嬉しいです^_^ (2019年12月14日 14時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
雛(プロフ) - 文才のかたまり、わたしにもください。小説とても読みやすいです。 (2019年12月14日 14時) (レス) id: a41e581cbd (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - リリアさん» わわわ!コメント有り難う御座います!太宰夫婦シリーズ、読んでくださっていたんですねっ あの作品にも思い入れは沢山有りますから、余裕が出来ましたらまた更新を再開させようと思います!好きだったと言ってくれて、本当に嬉しいです! (2019年12月14日 0時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミサぽん | 作成日時:2019年11月18日 9時