19話 ページ20
「殴らなくてもいいと思った。」
朝飯を食べている時、冨岡が突然喋った。
冨岡の頭には立派なたんこぶが出来ていた。少し面白い。
『そんなに気にするものでもないだろう。男の傷は勲章だと言うし。』
「そんな勲章いらない。痛いだけだ。」
そんな生産性のない会話をしていた。
「A!!任務ダ!!早ク隊服ニ着替エテ任務二向カエ!!!」
本当にこの烏はうるさいな。
「俺も一緒に行く。」
「ダメダ!!Aノ単独任務ダ!!着イテ来ルナヨ!!」
烏は、冨岡のたんこぶを突いていた。
かなり痛そうだ。
『やめろ。』
烏を冨岡から引き剥がし、部屋の外に追い出した。
そして冨岡の前に座り、こう言った。
『お前の身に危機が迫ってきたら、我の名を呼べ。』
冨岡はぽかんとしていた。
『いいな?』
口元に人差し指をたてて、念を押すようにそう言うと、冨岡はコクリと頷いた。
我は藤の花の家紋の家を去った。
それから幾度となく時が過ぎ、我は鳴柱になった。
そして、あの日以降冨岡に会うことはなかった。
今日は半年に一度の柱合会議の日。
屋敷の中庭につくと他の柱の姿が見えた。
「Aちゃん!久しぶりね。
最近、全然蝶屋敷に来てくれないから私寂しいのよ?」
今話しかけてきたのは、花柱の胡蝶カナエ。
カナエは人当たりが良くて優しい人間だ。
『怪我をしないし、最近任務の量が増え、あまり時間がないんだ。』
「そうなのね〜。
唯ちゃんは強いからお館様もきっと頼りにしてるのね。」
そうやった、笑顔で我に接してくれるカナエ。
我の一番の友人と言って、過言ではないだろう。
『そうだといいが。』
しばらくカナエと雑談をした。
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作者名:kogyu788 | 作成日時:2023年5月3日 16時