吹奏楽部員の思い出 (ページ5)

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後日

「やっぱりアンサンブルよりもソロで出たいです」

エミ「えー？やっぱりそうなの？」

「はい」

エミ先輩まだ諦めてなかったんだ。
もうその性格は逆に尊敬する。
でも、ソロをやりたいから全力で断らせてもらう。

彩夏「……先輩、校内発表まで実際練習期間が短いうえにアンサンブルは合わせるのが大変です。だからソロより負担になる可能性が高いのでやめたほうが良いと思います」

私をなんとかアンサンブルに引き込もうとブツブツ言ってるエミ先輩についに彩夏先輩が意見した。

そうだー！いけいけー！もっと強く言っちゃえー！

このは「それにそれに！私の音量は美紅ちゃんにどうやっても勝っちゃうんで、私もやめたほうが良いんじゃないかなって思います！」

あ、このは先輩も反対した。

こうして反対派が多くなったことにより

エミ「…わかった。ソロでいいよ。アンサンブルは諦める…」

エミ先輩は惜しそうに許可をくれた。
やったね。

彩夏「美紅ちゃんはそれで大丈夫？」

美紅「…はい…」

彩夏「そんなに心配しなくて大丈夫だよ。私が手伝うからね」

美紅「！あ、ありがとうございます」

こうして無事にソロをやることが決定した。

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部長「…次はバリトンサックスの丸山さんの演奏です」

回想をしている内にもう出番が回ってきたらしい。

私は楽器を持って前に出た。
楽譜を開き、バリサクを構える。

私はバリサクに息を吹き込んだ。

今回の曲にピアノ伴奏はない。
だからこそ自分で、自分一人で曲の世界を再現するんだ。

始めはゆったりしたテンポの優しく甘いメロディー。
自分が出せる最高に柔らかい音色で音を繋いでいく。
そしてそれは徐々に勢いが増し、軽快なメロディーに変化していった。
スタッカートやアクセントなどをきっちり吹き分け、難しい指も難なくクリアしていく。
最後はまたゆったりとしたメロディーに戻った。しかし今回は始めとは異なり切なく吹く。
聞いてる人に届くようにビブラートを効かせて。

私は最後の一音を吹ききった。
もうこれで主旋律をたくさん吹く機会は最後だろう。

礼をし、席に戻る。

ああ、終わってしまった。
やっぱり空虚感は残る。
虚しい。

…誰か、私の演奏を認めて。
そして、アルトの位置に座らせてください。
「あなたのほうが上手いから」っていう理由を付けて。