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エミ「1年生の二人はこれに、名前と誕生日と出身中学と担当楽器と一言を書いてね」

あの残酷な担当楽器決めから速くも一週間が経った。
でも、私はパートに馴染むことはなく、ただひたすら練習していた。

そしてさっきパートの部屋に入って来たエミ先輩から渡されたのは自己紹介カード。
どうやら先輩たちが1年のことを知る(覚える)ために書かなくちゃいけないらしい。

めんど。さっさと終わらせよう。

私は紙にペンを走らせる。



名前 丸山響

誕生日 12/31

出身中学 ◯◯中学校

担当楽器 バリトンサックス

一言


…一言どうしよう?がんばりますとか?いや、一言すぎるな。あ"あ"!!めんどいよー!!



……(考え中)。


あ。


思い付いた。内心ニヤリとした私はペンを持ち直す。


一言 みんなに迷惑をかけないように一生懸命練習を頑張っていこうと思います。



事実、これは皮肉だよ。

実はこの高校、県でトップの進学校なんだ。
だから、部活に手を抜いてる人が多い。
練習なんて真面目にやってる人なんか全然いない。
それなのに後輩に練習しろー、とか、上手くなれー、とか言うんだよ?笑えるよね。


お前らのほうが練習しろよ、そして上手くなれ。

私のほうが全然上手いから。

入学式の時の演奏とか聞けたものじゃなかったし。


捕捉なんだけど、サックスの先輩はみんな中学校3年間ともサックスやってた経験者。
だけどみんなそんなに上手くない。特にエミ先輩。
音より空気を生産してるんだもん。
まあそれを考えると二年の先輩はましだよ、割りと。


私は自己紹介カードに誤字や脱字がないか確認してからエミ先輩に出した。


「これでいいですか」


エミ「うん。ありがとう」


私はカードを出した後すぐに自分の席に戻って練習を再開した。
私の席は入り口から一番遠い窓側だ。

隣にはテナー担当の彩夏先輩が座っている。
彩夏先輩とはもう長年の付き合いだから、先輩は私の良き理解者のうちの一人だ。
だから私が練習を邪魔されるのをものすごく嫌うことを知っているし、練習中は用がない限り話しかけてこないからとっても楽。

めっちゃ練習に集中できる!

この席で本当によかった。
もし、エミ先輩とこのは先輩の間の席だったらと考えるとゾッとする。
なぜならずっとあの二人はしゃべってるから。
両側に人間なんて鬱陶しいし、楽しい楽しいおしゃべりをバリの音で妨げるのはさすがに気まずい。

ほら、今もしゃべってる。


もっと練習しなよ。

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作者名:空白 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php  
作成日時:2020年2月15日 12時

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